企業の社会的責任とは何か プリンスvs.日教組 広がり続ける波紋

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「先方の説明を受けてから10月下旬まで調査しなかったのは反省点」(小山執行役員)とプリンス側も落ち度を認める。この点について、過去に教研集会を受け入れた地方施設の責任者は「教研集会に右翼が来るのは知られたこと。申し込みをOKした以上は、開催に最善を尽くすべき」と批判する。申し込みから7カ月もの間、ホテル側が実情把握に努めなかったのは不可解でもある。

日教組は12月、会場使用を求めて東京地裁に仮処分を申し立てた。地裁は説明義務違反を理由とする解約は無効だとし、「全国集会のために使用する権利を有する」とした。プリンス側は異議を申し立てたが、地裁は今年1月に仮処分を認可。高裁への抗告も同月30日に棄却となり、一定の司法判断が下された。ところが、プリンス側は「解約の有効性を本訴で引き続き主張していく」として、仮処分に背いて会場提供を拒否。利用予定だった2月1日、会場では新卒者を対象にした味の素のセミナーが開催されていた。


 教研集会の経験がある施設関係者は「週末に電話が来たり、右翼の抗議活動は開催の何カ月も前からあった」と話す。それだけに「開催日前、プリンス新高輪の近くには街宣車がまるで見られなかったようだ」(関係者)と右翼が鳴りを潜めた今回をいぶかしむ声もある。

西武ホールディングスの後藤社長は旧第一勧業銀行時代、総会屋との決別を図るために奮闘した「4人組」の一人。小説のモデルにもなった。後藤社長は右翼からの圧力について「一切ない」と断言。後藤氏を知るグループ関係者は「コンプライアンスには強い理念を持っている。保身でやるはずがない。集中砲撃を受けることを覚悟したうえでの判断だと思う」と擁護する。

プリンス側の行動については、憲法が保障する「集会の自由」を侵すものとの批判が強い。仮処分とはいえ、司法判断に従わない姿勢は法治国家を蹂躙する行為でもある。それだけに、「今後の労働運動にも影響する」として連合側は徹底抗戦の構えだ。「プリンスには社会的信頼を回復するためのケジメを求める」(山本副事務局長)とし、国会での追及を民主党に働きかけていくという。

安全・安心のために「超法規措置」を選んだ西武グループ。それが受け入れられる余地は少なそうだ。
(週刊東洋経済:井下健悟、高橋篤史 撮影:梅谷秀司)

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