企業の社会的責任とは何か プリンスvs.日教組 広がり続ける波紋

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企業の社会的責任とは何か プリンスvs.日教組 広がり続ける波紋

プリンスホテルによる日教組の会場使用拒否問題。業法違反の疑いで行政が聴取に乗り出し、連合はボイコット運動を始めた。事態はエスカレートの様相を見せ始めている。
(週刊東洋経済3月8日号より)

「住民や学校、お客様への安全・安心を最優先に考えた」。日本教職員組合(日教組、32万人)による会場使用を拒否した問題で、プリンスホテルは2月25日に初めて会見を開いた。親会社である西武ホールディングスの後藤高志社長は契約解除の理由として「安全・安心」との言葉を何度も口にした。 


 だが、幕引きとはいきそうにない。日教組は3月中旬にも損害賠償請求訴訟を提起する方針だ。2月15日には日本労働組合総連合会(連合)の中央執行委員会が、全組織によるプリンスホテル使用の自粛を決定。実際、傘下組織では100万円以上のキャンセル料を支払って使用を中止した例もある。「無理が通れば道理が引っ込むでは困る。うやむやにするつもりはない」(山本幸司副事務局長)。連合の高木剛会長は、プリンスホテルで行われるパーティにも今後は出席しない意向だという。

さらに、会場使用と合わせて行った宿泊予約の解除に対し、18日の衆議院予算委員会で舛添要一厚生労働大臣が「(宿泊拒否の禁止を規定した)旅館業法違反の疑いが濃厚」と発言。管轄の港区がプリンスホテル関係者の事情聴取を行い、営業停止も含めた処分を検討。「会場使用拒否」の波紋は広がる一方だ。
 問題となった日教組の教育研究全国集会(教研集会)は今年で57回目。参加者が1万人を超す大規模なもので、全国各地で行われてきた。開催に合わせて右翼団体が100台以上の街宣車を連ね、大音量で抗議行動を繰り広げることでも知られる。過去にも会場利用を申し込んで拒否されたケースが4度あったが、いずれも裁判で契約拒否が否定された。

利用承諾から7カ月 不可解な解約の経緯

今回の経緯はどうだったのか。日教組は昨年3月に2008年の開催地を東京と決め、JTB系の旅行代理店に会場予約を依頼した。その後、同月30日に代理店がプリンス本社営業部から「グランドプリンスホテル新高輪」について利用承諾の連絡を受けた。近年の開催会場は公共施設が多い。利用が承諾されたことを聞き、日教組の中村讓書記長は「駅から近く交通の便もいい。ありがたいことで驚きもあった」と振り返る。その後、日教組は会場費の半分1155万円を支払い、10月にはホテル側から申込確認書も届いた。

だが、11月に入り事態が急変した。この間の事情についてプリンス側は「社内で予約確認をする中で(宴会内容を外部へ漏らさないよう要請があるなど内容が)おかしいという声が出て調査に動いた」(小山正彦執行役員)と説明する。調査は10月下旬から11月上旬。前回開催の大分県にも出向いた。結果、「前回開催時は警察の警備によって問題なく実施した」という日教組の説明と、自社の調査が大きく異なるとして、11月5日に解約を申し入れた。

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