ベルガード「倒産8年」社員5人で甦った古豪の技 原動力はMLB選手と国内企業とのコラボ

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人気選手の中には、愛用する防具の画像をSNSで自ら発信する例もある。

着けた画像を同社に送る選手もいる。

それが広告効果を生み、防具だけでなくほかの商品の受注も増えた。

ちなみに有名選手とも基本的に契約をせず、用具のみを無償提供。一般の選手には有償で販売するのがビジネスモデルだ。

8年前に倒産したがV字回復を果たす

前身の会社、ベルガードは、戦前に創業した老舗メーカーだったが、8年前に倒産。その通達は突然だった。当時、勤続30年のベテラン社員だった永井氏がこう振り返る。

セスペデス選手から送られてきた画像(画像提供:ベルガードファクトリージャパン)

「2012年2月20日のことです。社内で仕事をしていると、突然、社員が会議室に集められました。室内に入ると弁護士(後に管財人)がおり、『会社は今日で終わりです。明日からは社屋に入れません』と通知されたのです。何の前触れもなく、びっくりしました」

翌21日、ベルガードの破産手続き開始が決定し、倒産した。

そこからの永井氏の行動は迅速だった。1人で存続を図り、新会社設立に向けた取り組みを始めた。なぜそうしたのか。その原動力は、顧客の存在と自らの問題意識だったという。

「春からの野球シーズンを控えて注文も多く受けており、お客さまの商品への期待を裏切ることはできませんでした。また、私自身も将来の独立を視野に入れて、早稲田大学の起業家セミナーに通い勉強もしていた。この際、自分で再生しようと考えたのです」(同)

「ベルガード」の商標を引き継ぎ、再スタートしたのは4カ月後の2012年6月だった。この時間差で、大手メーカーとの取引も軒並み終了となった。当面は貯金でしのいだという。

「倒産した会社は、大手のOEM(相手先ブランドによる製造)が中心で、利益率も低かった。多額の費用をかけて商品カタログを制作するようなムダもありました。新会社設立を機に、商品を利益率の高い自社ブランドで出し、コストも削減しようと考えたのです」(同)

7年後の2019年、倒産前の売上高に並んだ。当時12人いた従業員は5人で運営する。

ベルガードのV字回復には、簡単にまねできない部分もある。だが12年前の2008年、当時はサラリーマンだった永井氏に取材した筆者として、こんな視点も紹介したい。

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