ベルガード「倒産8年」社員5人で甦った古豪の技 原動力はMLB選手と国内企業とのコラボ

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倒産前は「生産/企画」という肩書だった永井氏。もともと職人で、自らミシンを駆使して防具も縫える。一方で対外交渉を担い、人脈も広げた。組織人で勤続年数が長くなれば、自社の課題も見えてくる。同社の場合は、利益率の低さと広告の費用対効果だ。

「当時の会社の製造技術は評価されていました。でもOEMでは社名も隠れてしまう。倒産で大手との取引終了が結果的に幸いし、自社ブランドを前面に打ち出せたのです」

再スタート時の永井氏を支援したのが、旧知の取引先でベルガードブランドのファンたちだ。アンパイアショップを運営する元プロ野球審判員、ソフトボールの審判用品を販売する会社の女性社長という人が注文してくれた。受注が増えると、旧会社のベテラン職人も3人入社。フェイスブックなどSNSでの情報発信も、商品告知と売り上げ拡大になったという。

「カタログ製作も自分で商品画像を撮影し、ネット中心にしたので費用は格安になりました。当初は自らブログも発信しましたが、MLB選手の使用が話題になると、一般の野球関係者がSNSで発信してくださり、消費者と商品の接点は多様化していきました」(永井氏)

今でも、防具はすべて日本国内の熟練職人が手作業で行うなど、モノづくりの基本は崩さない。メディア露出が増えるとコラボ商品の引き合いも増え、コトづくりは進化した。

オール埼玉製の「武州和牛グローブ」

ここ数年は、日本人有名選手が身に着けるAXFのネックレスに注目が集まり、累計販売数は約10万本だという。だが永井氏は、事業展開の再構築も考えている。

「当社の強みは防具に象徴されるように、プレー中の選手を守り、パフォーマンスを高めること。その意味で、グローブ製作にも注力しています」

現在は「ベルガード」と「アクセフベルガード」ブランドのグローブが中心だ。ちなみに希望小売価格は、前者ブランドが軟式用・3万7000円、硬式用・6万円からで、後者は軟式用・4万5000円、硬式用・7万円(いずれも税別)からと高額だ。

「武州和牛グローブ」(武州和牛ストロングスレザーシリーズ)ブランドも開発した。

新開発した「武州和牛グローブ」(5万4000円+税など。画像提供:ベルガードファクトリージャパン)

「武州和牛は2000年代に入ってから誕生した埼玉産の牛で、皮本来(革になめす前)のシワも復元力が強く、指先まで力が伝わる、機能性の高いグローブとなっています。素材、革をなめすタンナー(株式会社ジュテルレザー)、メーカー(ベルガード)、販売先(山本グラブスタジオ)と、すべて “オール埼玉”で開発しました」(永井氏)

「使いやすくてデザイン性もいい」という声が高まり、ネット販売が伸びているという。

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