3月25日、アメリカの仲介で日米韓首脳会談が実現し、安倍首相と朴大統領が初めて会談した。そこまでの過程で、韓国の反日、日本の嫌韓のムードが膨らむ中、従軍慰安婦問題に関心が高まり、2月28日、菅官房長官は国会で河野談話について「政府内に検討チームをつくって確認する」と答弁した。
韓国側は、談話見直しに乗り出すタカ派政権の挑戦、と対決姿勢を強めた。ところが、安倍首相は3月14日、見直しは考えていない、と国会で明言した。その後、23日に首相側近の萩生田総裁特別補佐が「検証によって新事実が出れば新談話の発表も」と述べる。だが、菅官房長官は即座に24日、「検証はするが、見直しはあり得ない」と表明した。一連の安倍政権内部の動きをどう見ればいいのか。
安倍首相の談話見直しへの強い意欲は本心で、アメリカへの配慮から「見直さず」と明言したものの、支持者向けに路線不変を明確にする必要ありと考え、側近の発言を通して本心をアピールする作戦を取ったのでは、と見る向きもある。
だとすれば、アメリカや韓国向けと国内の支持者向けに異なる対応を見せる「二枚舌」という批判も噴出しかねない。
一方、猛進型の安倍首相の独走を、熟慮型の菅官房長官が手綱さばきよろしく抑え込み、「見直さず」に押しとどめたという分析もある。
菅氏についてはこんな話を思い出す。
2月にインタビューしたとき、菅氏は「師は梶山元官房長官」と述べ、梶山氏から聞いた話を口にした。橋本内閣時代、首相訪中に際して、日米安保条約に基づく周辺地域に台湾海峡が含まれるかどうかが問題になった。当時の加藤幹事長は中国に配慮して「含まれない」と述べる。ところが、梶山官房長官はわざわざ「含まれる」と言い出した。
その場面を振り返って、菅氏は「梶山さんは『橋本首相が訪中するのに何もお土産がない。お土産をつくってやらなければ。訪中して、首相か台湾海峡は含まれないと言えば、首相に従うのが官房長官』と話していた。平気でそういうことをやっていた」と語った。
首相と官房長官で役割分担して、官房長官が憎まれ役や貧乏くじを引き受け、落とし所に持っていって得点を稼ぐという戦法だ。「手本は梶山さん」と言う菅官房長官は、安倍政権での日韓問題への対応で、もしかするとこの手を使おうとしたのかもしれない。
吉と出るか凶となるか。高等戦術のつもりが小手先の弥縫策に終わる危険性も大きい。
(撮影:尾形文繁)
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