新型コロナウイルスの経済への影響は、まずインバウンドが関連する業界で出てきた。中国での感染拡大で日本に来る中国人観光客が激減し、旅館の倒産や廃業が相次いでいる。
次に直撃を受けたのが、イベントや飲食業界だ。2月下旬の外出自粛と3月からの一斉休校の要請などもあり、冒頭の佐藤さんが働くホテルは「インバウンド崩壊」「イベント中止」「会食自粛」の三重苦の最中にある。
首都圏で飲食店7店舗を展開する渡邊正都さんは、「歓送迎会の予約がほとんどキャンセルになった。普段はアルバイト70人体制だが、今はゼロとは言わないまでも、仕事をお願いできない状況だ」と話す。
さらに人材紹介会社の担当者は、「買いだめ需要や休校の影響か、スーパーやコンビニはむしろ求人が増えているが、飲食は求人のキャンセルが発生している」と明かした。
これまで人手不足に悩む業界の救世主として引っ張りだこだった学生だが、客が減れば人手不足は解消する。事業と正社員を守ることに必死な企業は、アルバイトを減らすしかない。
バイトの時給6割補償でも「焼け石に水」
飲食以外のアルバイトも安泰ではない。都内の大学3年生の後藤優花さん(仮名、20歳)は大学受験に特化した塾でアルバイトしているが、小中高校が一斉休校に入った3月2日に塾も授業を停止し、自習室を閉じた。私立大学入試が軒並み終了し、国公立大学の前期入試も終わったタイミングのため、塾側としても判断しやすかったのかもしれない。
塾では半月前に学生バイトのシフトを作成する。3月上旬のシフトはすでに出ていたが、働けなくなった分は、時給の6割が補償されることになったという。それでも後藤さんに安堵の色はない。
「実はうちの塾は前もってシフトに入れることは少なく、実際は数日前とか前日に仕事が入ることがほとんど。だから私も3月上旬は2日しか入れてなく、補償されるのも微々たるものだ」(後藤さん)
大学は新年度の講義開始をゴールデンウィーク前まで延期すると決めた。後藤さんは「すごく暇で、短期バイトを探しているけれど、求人自体が少ない。アルバイト先の塾では春期講習は実施すると言っているので、それを待つ」と話した。
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