コロナショックから日本を守る経済対策の要諦 最悪の事態を想定し準備しておくことが必要だ

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なお、経済政策を実行する政府の視点から見ると、上記で述べてきたような支援策は政府支出ということになります。マクロ経済学における政府支出には、所得再配分機能、資源配分機能、経済安定化機能の3つの機能が期待されています。

所得再配分機能とは、市場の仕組みだけでは調整困難な所得格差等の問題を緩和していくこと。ここでは、一律に現金給付等の施策ではなく失業や収入減少に実際に接している個人を対象に所得再配分を行っていくことが重要と考えられます。

資源配分機能とは、民間では供給が難しい財・サービス、つまりは公共財を政府支出で供給していくこと。医療崩壊を防止するために政府支出で供給していくべき公共財は少なくないと思います。

そして経済安定化機能とは、経済の状況を安定させ個人の生活を守ること。今回の場合、「コロナウイルス対策」×「経済活動の維持」の両立に政府支出を効果的に行っていくことが同機能を果たすことになると思います。ちなみに、これまで述べてきた個人の消費、企業の投資、政府支出は、輸出・輸入を含めてマクロ経済の総需要の4要素であり、GDPを構成するものでもあるのです。

金融ショックへの対策

最後の重要なパートは金融ショックへの対策です。

まずコロナショックとしての金融ショックについては「コロナショックが招く『経済危機』最悪シナリオ」(2020年3月14日配信)で詳しく分析しましたが、その内容を図表4としてまとめておきます。

金融ショックへの対策を考えるうえでも、「最大の問題の最大の問題箇所」から逆算して施策を検討していくのが戦略の要諦になると思います(図表5)。相場がさらに大きく下落し、市場全体で信用収縮が起き、さらには流動性危機が発生、金融機関へのダメージも多大な状況となり、金融危機にまで及んでしまうというのが最悪のシナリオではないでしょうか。

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