図表3は、需要ショックについて、それぞれの項目、要因、さらには「最大の問題の最大の問題箇所」を記述したものです。
個人が主体となる消費については、「消費をマイナスとする要因は何か」を考えた場合、(将来や現在の状況への)不安、(経済活動の落ち込みや勤務先等の状況悪化に伴う)収入減少、さらには(勤務先等の倒産やレイオフ等による)失業が3大要因であると考えられます。企業部門については、「経済活動の維持を阻害し、企業が供給者として企業活動を維持していくために阻害要因となるものとは何か」を考えた場合、(将来や現在の状況への)不安、(経済活動の落ち込みや減収・減益に伴う)資金繰り悪化、さらにはこれらを原因とする倒産が3大要因であると考えられます。
ここで重要となるのが、「最大の問題の最大の問題箇所」から逆算して施策を検討していくという戦略の要諦にこだわることです。どこかの企業に勤務しているあなた自身が現在抱えている経済的な不安とは、「この状況はどこまで進んでしまうのだろうか、給料が減ることはないだろうか、あるいは場合によっては会社が倒産したり辞めさせられたりすることで失業なんてことにはならないだろうか」という点に集約されるのではないかと思います。
コントロール不能な不安に備えられるか
行動経済学や行動ファイナンス、あるいは心理学においては、人は最悪の事態まで想定し、覚悟を決めることができるまでは不安な心理に苛まれるということが指摘されています。上記の場合で言えば、「会社が倒産したり辞めさせられたりして失業しないか」という自分自身ではコントロール不可能なことに対して抱いている不安を緩和させることは難しいのです。
この場合、「万が一失業するようなことがあっても、〇〇のような対策が打たれているので金銭的にも何とか持ちこたえられそうだ」と思う心理が不安を緩和させるのです。したがって、需要ショック対策としての失業対策としては、万が一失業しても国の施策で即座に失業手当を受け取ることができることなどを示していくことが重要になるでしょう。また政府としても、このタイミングで失業手当の一連の手続きをスマホのアプリ等でできるようにするなど、デジタルトランスフォーメーションをスピードアップさせる機会とも捉えた実行が望まれるところです。
企業経営者に対しても、上記と同じことが言えるのではないかと思います。彼らの「最大の懸念・問題」は、自社が資金繰り難となり、最終的には倒産してしまうこと。制度金融を拡充し、必要に応じて金融機関への資本注入もしながら、企業には返済猶予などの対策を講じていくことが大きな不安を緩和することにつながると思います。感染拡大の収束に半年以上を要することが見込まれる場合には、ここまで踏み込んだ対策が必要になってくると予想されます。中小企業の経営者にとっては、株価下落よりも、倒産件数の増加ほど心理的にネガティブな事象はないと思います。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら