キリン幹部が語った「物言う株主」への猛反論 横田CFO「ビールだけでは生き残れない」
――IFPはガバナンス強化も求めており、IFP側が推薦する社外取締役候補者2人の選任を求めています。2月にキリンHDが発表した役員人事では、社外取締役を4人から7人に増やして、そのうち、女性を2人、外国人を2人にしました(3月27日の定時株主総会で決議)。IFPの主張が多少影響した面もあったのでしょうか?
今回の取締役会の人事は、彼らに言われたからではなく、「KV2027を実現するにはもっと多様なボードメンバーの構成が必要だろう」と時間をかけて検討し、作ったものだ。取締役の評価は1年サイクルで行っている。ボードメンバーの構成や報酬体系などは指名・諮問報酬委員会で1年かけて議論をして、アウトプットが出てくる。
IFPが取締役の候補者を提示したのは2020年1月だ。そのタイミングから急ごしらえして、内定者を決めることはできない。
――IFPの主張や提案を過去に受け入れたり、事業戦略に反映させたことはありますか。IFPは、「キリンHDが2019年末に発表したオーストラリアの乳飲料事業の売却は、以前からIFP側が提案していたことだ」と言っています。
いや、これはIFPに言われる前から改革に取り組んできていた。2016年~2018年の中期経営計画では、キリンビバレッジ、ブラジル事業、そしてオーストラリアの乳飲料事業、この3つの低収益企業・事業の課題に取り組むと明確に方針を出し、着実に不採算事業の見直しを実行してきた。時間はかかったが、苦労をしてようやく実現できたものと理解いただきたい。
事業は買収するときよりも、売却するときのほうが大変だ。売りたいアセットは問題があるから、買い手がなかなか見つからないこともある。そのため、とにかくブラジル事業やオーストラリア事業の経営改革を行い、それでもうまくいかなかったら売却する、という方向性で取り組んだ。
ブラジル事業は大きな減損を出したが、改革を進めて経営効率が上がってアセットとして魅力が出てきたから、ハイネケンが買ってくれた。オーストラリア事業も同様だ。われわれは過去の経営陣の意思決定による「負の遺産」をしっかりと整理して、次の成長のステージに向かうように基盤を強化した。おごってはいけないが、それくらい経営を刷新した。
見直すべきところは見直す
――株主総会では、IFP側の主張に賛同する投資家はどれぐらい出ると見通していますか。
それは、コメントが難しい(苦笑)。差し控えたほうがよいだろう。
――仮にIFPの提案が過半数の票を取らなくても、一定数の票が集まった場合にはどう対応しますか。
株主の皆さんの声を聞き、経営で見直すべきところは見直す。内容に応じてしっかりとしたアクションを取るのは当然だ。
――IFPの今後の動きでシミュレーションをしていることは?
今行っている株主提案以外に、継続して今後もさまざまな要求が行われる可能性はある。究極的には当社に対して訴訟を起こすなどといった動きはあり得るが、今のIFPの立ち位置だと、それ以外に仕掛けられないのではないか。
とにかく今後も、IFPとはコミュニケーションを続けたい。株主の意見をしっかりと聞く姿勢と、市場の評価を受けながら経営としての戦略や意思決定にその声を反映していくことは変わらない。環境変化は絶えず起こるから、戦略は当然、随時見直していく。
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