キリン幹部が語った「物言う株主」への猛反論 横田CFO「ビールだけでは生き残れない」
――その具体的なシナジーの見通しが公表されたのは2020年2月でした。2019年8月の資本提携の発表時点では描けていなかったのですか。
8月の時点でシナジーの積算はしていたが、その妥当性を検証するためのコミュニケーションを十分にとれていなかった。8月に出資を発表した後、数字の妥当性の検証を行い、確証を得てから発表した。遅いと言われれば、確かに遅いかもしれない。だが、われわれは着実にステップを踏んでいると思っている。
――約3割のファンケル株式を約1300億円で取得しました。「高値づかみ」との声もあります。
厳正にバリュエーション(企業価値の評価)を行い、事業モデルとして本当に投資の意味があるものかを各方面から検証した。その結果、「妥当である」と判断して今回の出資に至った。
取締役会で議論はあったが、短期的なリターンを追求するのでなく、ある程度の時間をかけてしっかりとした投資効果を実現していく。ROIC(投下資本利益率)10%のリターンをできるだけ早く実現するように進めていきたい。
成長投資はビールを優先
――ファンケルとの資本提携の発表後、株価が下落しました(資本業務提携を発表した2019年8月6日の翌日には、株価が前日比5%減の2258円に下がった)。
8月の発表後、投資家やセルサイド(証券会社など)のアナリストに説明会を複数回行い、戦略の意図を細かく説明したら株価は戻ってきた。十分にコミュニケーションを取って説明を補ったことで、市場には評価いただいたのかなと思っている。
会社全体での成長投資への考え方で言えば、まずはビールビジネスへの投資にプライオリティを置いている。ただ投資機会がなかなかないので、出資枠の一部をファンケルへの投資に使った。
ヘルスサイエンスの領域は、ファンケルと当社のリソースで一定のビジネスが展開できると思っている。投資家の皆さんの間では、「ヘルスサイエンス分野でどんどんM&Aを行うのでは」「ファンケルとのシナジーが本当に実現できるのか」などと心配される方も多い。まずは実績を示すことが優先されるので、(同分野への)追加出資はあまり考えていない。