一流の人は「努力の娯楽化」という共通点がある 持続可能なものは「好き」を中心に生まれる

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:確かに、自分を奮い立たせてまで何かをやろうとするときは、無理していますね。

楠木:あらゆる仕事のプロと呼ばれる人の特徴は、それが長く続くということです。出合い頭の一発ホームランは運がよければ打てる。ホンモノとニセモノの差が顕著に出るのは持続性です。

楠木建(くすのき けん)/一橋ビジネススクール教授。1964年東京都生まれ。1992年一橋大学大学院商学研究科博士課程修了。一橋大学商学部助教授および同イノベーション研究センター助教授などを経て、2010年より現職。専攻は競争戦略とイノベーション。著書に『「好き嫌い」と経営』『「好き嫌い」と才能』(ともに共著)、『ストーリーとしての競争戦略』『経営センスの論理』『好きなようにしてください』『すべては「好き嫌い」から始まる』『戦略読書日記』がある(撮影:尾形文繁)

:そういう意味で、持続可能ものが自分の「核」にないとダメですね。それは、「好き」を中心に生まれる。

楠木:往々にして、世の中には「一発逆転」というニーズがあります。
いつの時代も、少なくとも主観においては圧倒的にうまくいっていない人のほうが多い。「なんかうまくいかねぇな」「なんで世の中よくなんねぇのかな」って。その人たちは本能的に楽をしたいと思っています。うまくいかない、でも楽をしたい。この2つを掛け合わせると、「一発逆転」になる。

:そういう本が、世の中にはあふれていますからね。

楠木:昔の漫画雑誌の後ろのほうによくありましたよね。「このペンダントをつけた途端に、彼女ができました!」みたいなやつ。あれが典型です。ああいう考え方は、いわば微分的です。ある位置時点と、ある位置時点の差分を見る。その振れ幅が大きさを追求する。この『SELFISH』で書かれていることは、非常に積分的。いろいろあるんだけど、時間と共に積み重なっていく面積を大きくしようという意図が感じられます。

:まさか微分積分の話がここで出てくるとは。しかし、とてもわかりやすいです。

楠木:みんな、わかってはいるんです。わかっちゃいるけど、なんで逆のほうに行っちゃうのか。それは、逆側に引っ張る要因、誘引があるからです。だから、流されちゃダメだよ、無理しちゃダメだよ、というメッセージが重要さを持つんです。

:こうでなければならない、こうでなければ成功できないという考え方にとらわれないように。いかに成功するかではなく、いかに自分らしくいられるかが大事なんですね。

なぜセルフィッシュな人の周りには人が集まるのか

:本書の中に、「セルフィッシュな人は、相手のセルフィッシュを許容できる」という言葉があります。僕自身もそういう体験が結構あって、セルフィッシュな人の周りには、セルフィッシュな人が集まりやすい。これについては、どう思いますか?

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