セブン、米コンビニ「2兆円買収」破談にみた課題 アメリカ事業を加速する狙いだったが・・・

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店舗数の増加だけでなく、売り上げの引き上げも課題となる。2018年の米セブンの全店平均日販は54.9万円と、2019年2月期の平均日販が65.6万円だった日本のセブンとは大きな差がある。

アメリカにおいてコンビニは、給油のついでに買い物をする場所という立ち位置で、米セブンでも売上高の約半分をガソリンが占める。だが、ガソリン販売ではセブンの強みが発揮できないうえに、「セブン&アイHDはガソリンスタンド事業が成長するとは見ていない」とセブンに詳しいコンビニ関係者は語る。

オリジナル商品の販売強化がカギ

アメリカのエネルギー情報局によると、現地で販売される自動車台数のうち、ガソリン車やそれに類する自動車は2019年に94%を占めたが、2050年にはEV(電気自動車)などの成長によって81%まで縮小すると見込まれる。

そこで現在強化するのが、比較的粗利率が高い、ホットドッグやハンバーガーなどオリジナル食品の販売だ。日本では2019年11月時点で売り上げに占める弁当やおにぎり、フライドチキンなどのオリジナル食品の構成比が30.6%にのぼるが、米セブンの場合、ホットドッグやハンバーガー、サンドイッチといったオリジナル商品の販売は2019年9月時点で14.9%にとどまる。

「米セブンと日本のセブンは、以前からあまり連携を取っていなかった」(セブン&アイグループ元社員)との指摘もある。「2005年から社長を務めるデピント氏に、米セブンの運営は一任されてきた」(同)。今後、米セブンの展開にアクセルを踏みこむためには、グループ内で強固な協力体制を築く必要があるだろう。

遠山 綾乃 東洋経済 記者

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とおやま あやの / Ayano Toyama

東京外国語大学フランス語専攻卒。在学中に仏ボルドー政治学院へ留学。精密機器、電子部品、医療機器、コンビニ、外食業界を経て、ベアリングなど機械業界を担当。趣味はミュージカル観劇。

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