セブン、米コンビニ「2兆円買収」破談にみた課題 アメリカ事業を加速する狙いだったが・・・
2兆円を超える大型買収は実現しなかった――。
セブン&アイ・ホールディングス(HD)は3月5日、検討していたアメリカの石油精製会社マラソン・ペトロリアムのコンビニエンスストア併設型ガソリンスタンド部門「スピードウェイ」の買収を断念した。買収額は約220億ドル(約2兆3000億円)ともいわれる超大型案件だったが、買収額で折り合えなかった。
全米コンビニエンスストア協会によると、アメリカには15万2720店のコンビニがある(2019年12月時点、以下同)。スピードウェイは業界3位の約3900店を展開している。
スピードウェイを中心とするマラソン・ペトロリアムの小売部門は、2019年に15.8億ドル(約1650億円)の営業利益を稼いだ。だが、マラソン・ペトロリアムは石油精製事業を強化するため、スピードウェイを2020年末までに切り離す予定だと2019年10月に公表していた。
米セブンが買収を主導したが・・・
売却先候補に挙がったのが、セブン&アイHD。同社はコンビニ業態のセブン-イレブンをアメリカで9631店展開しており(2019年11月末時点)、国内だけでなくアメリカでもコンビニ業界トップの位置にいる。現地のセブンは、セブン&アイHDの完全子会社であるアメリカのセブン-イレブンが運営している。
ジョセフ・マイケル・デピント社長が率いる米セブンが買収を推進したが、セブン&アイHDの井阪隆一社長が難色を示したとみられる。
多額の借り入れが必要となるうえに、 EV/EBITDA倍率(企業価値をEBITDAで割った値)は約15倍ともいわれていた。「アメリカではコンビニを併設したガソリンスタンドが行き渡っており成長は難しい。ほぼゼロ成長ならEV/EBITDA倍率が4~5倍、ごく低成長でも6~7倍程度で買収しないといけないが、成長を見込んでいる高額な買収価格だ」とM&Aに詳しい早稲田大学の服部暢達客員教授は指摘する。
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