ヤンキーとネトウヨが日本を支配する日 政治の世界で実感した「反知性主義」

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タカ派すら心配なヤンキー化

「でも、一部の動きじゃないのか?」と他人事のように思う読者も多いだろう。しかし、ヤンキー有権者に支持された政治勢力が、一程度、国会や自治体で存在感を発揮すれば、読者の皆さんの経済活動にも影響が出るかもしれない。原発政策の行方によっては、立ち直りかけた景気の先行きは怪しい(すでに原油価格の高騰と円安で2月の貿易赤字は過去最大)。

一方、安倍総理の靖国参拝に米国が「失望」の意を出すと、米国大使館の日本語FBページをネトウヨが罵詈雑言で連日炎上させる。安全保障上、最大のパートナーである米国の信頼を損ねて、中国の軍事力拡張に単独で立ち向かえると思っているのだろうか。

左右の両極化は、米国で茶会党(ティーパーティ)や99%運動が台頭したように、経済・社会のグローバル化への反発を背景に、先進各国でみられる現象だ。「ヤンキー化」はその日本版かもしれない。

民主党の政権運営が失敗した影響で、真ん中の立ち位置にいるはずの「リベラル」勢力に存在感はなく、自民党内の宏池会も主導権を喪失。それがまたヤンキー化を加速させている。最近、入手した民主党の機関紙(3月21日号)で金髪のお兄さんが一面に登場し、「リベラル政党として10年間は地道にやれ」と、来年の統一地方選に向け、ハッパをかけているものの、展望はまったく見えてない。

なお、鈴木氏や家入一真氏の選挙を手伝った関係で、私をリベラル派と見る向きもあるらしいが、それは誤解だ。大学卒業時は憲法改正の提言に共鳴して読売新聞を就職先に選び、同期の記者の間でも「プチタカ派の保守」だった。ただし現下の日本では、安全保障よりも経済再生、ビジネスの新陳代謝、ソーシャルプロデュースが優先課題だと思い、その観点で政治家を支持してきた。

一応、私の外交・安保観を言うと、好むと好まざるとかかわらず、中国は尖閣奪取に動くだろうから、日米安保体制の下、集団的自衛権を限定的に認めて防衛力強化を図るべきと考える。本音を言うと、韓国の反日政策も嫌いだ。しかし「ヤンキー化」は政治から対話性を失わせる。その歯止めとしてのリベラル勢力があまりに弱体化することに、プチタカ派の私ですら危機感を覚えている。

新田 哲史 広報コンサルタント/コラムニスト

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にったてつじ

1975年生まれ。読売新聞記者(社会部、運動部等)、PR会社勤務を経て2013年独立。企業広報のアドバイス業務の傍ら、ブロガーとして「アゴラ」「ハフィントンポスト」にて評論活動を行う。2013年の参院選、14年の都知事選ではネット選挙案件を担当。東洋経済オンラインではネット選挙の記事を寄稿し、野球イノベーションの連載を企画した。

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