ロシア対外諜報のトップが語るアメリカと中国 中国は同盟国ではないが特権的な関係にある
石川 どのような地域あるいは分野が対外情報庁にとって重要ですか、アメリカ、中国、中東ですか。それとも対テロ関係ですか。
ナルイシュキン 地域で言えば、もう一度繰り返しますが、重要なのはわが国の利益に対する外的脅威が発生する地域、より正確に言えば方向性です。多分あなたは特別な意図があって「中国」という言葉を地理的な方向性の一つとして質問に入れたのでしょうが、すぐお答えしたい。中国は軍事的な同盟国ではないが、信頼できるパートナーです。中国とロシアの間には、単に戦略的なパートナーというだけでなく、特権的な戦略的関係が存在します。中ロの相互協力関係は、この広大なユーラシアの空間だけでなく、全世界の安定と安全保障のための重要なファクターなのです。
石川 アメリカは自らの安全保障のドクトリンの中で、ロシアと中国は、アメリカへの潜在的な脅威、チャレンジャーだとしています。今の米ロ関係についてはどのように評価していますか。
ナルイシュキン アメリカとロシアの国家間の関係については、隠すつもりもないが、下に下にとレベルが低くなっています。原因はたくさんあるが、主要な原因は、アメリカが衝動的で予想不可能な、そして全体として攻撃的な外交政策をとっており、グローバルな支配を手放すことを望んでいないことです。そのため、ロシアや中国に対して敵視政策が行われているのです。
ロシアと中国は、特にロシアについては明言しますが、全世界の支配を目指してはいない。だが、この両国は世界のさまざまな地域での問題の状況や決定に対して、あるいは世界全体に対しても影響力を持っている。このことをアメリカは好まない。
石川 好まない・・・・・・。
ナルイシュキン アメリカのほうが望んでいない。
頂上にいたアメリカが変化の中で抱く嫉妬心
石川 あなたはそのことを感じていますか。
ナルイシュキン 日々感じていますよ。まあ下世話な言葉でいわせていただければ嫉妬心みたいなものですね。ロシアに対しても中国に対しても、アメリカのほうからね。もちろん1990年代という時代が、アメリカを堕落させました。そのころアメリカは頂上にいて、そこから命令することに慣れてしまった。頂上にいるアメリカは唯一のもので特別な存在、というわけです。
でも時代は変わった。彼らもわかっているが、このグローバリゼーションという時代、ドクトリンはもう終わりだとはいいませんが、終末に近づいているのは明らかです。グローバリゼーションの時代も、アメリカの一極支配も終わりに向かっている。そこからアメリカの中国、そしてロシアへの敵視政策が生まれているのです。
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