希代の名経営者ほど「後継者」が決まらない理由 日本電産・ファストリ・ソフトバンクの悩み
こうして見れば、わかるように、永守氏、柳井氏、孫氏は、ともに自分と同じような極めて高い能力を求めている。口では違うことを語っていても、要するに、ミニ永守、ミニ柳井、ミニ孫を求めているといえる。
この3氏が気づいていないのは、そんな人はこの世にほとんどいないということだ。もし、3氏と同じような力があるのなら、自分で次の日本電産、次のユニクロ、次のソフトバンクを立ち上げている。
特に、3氏がやってきたように、後継者候補をサラリーマンとして成功してきた人(日本電産の吉本氏・関氏、ユニクロの玉塚氏、ソフトバンクのアローラ氏)から選んでも、後継者としてかじ取りをするのは至難の業だ。
オーナー経営者は自らが株主であるから、自分の立場は盤石であり、リスクを取って大きな利益を狙って思い切った決断をすることができるのに対し、雇われたサラリーマン経営者は、リスクの大きい決断をするとオーナーから解任されるのではないか恐れ、当たり障りのない決断をしがちである。
ここで世襲の可能性を考えてみると、現在62歳の孫氏は「60代で引退する」と過去に語っている。永守氏は「当社は同族企業を否定しているので、息子には譲らない」、柳井氏は「絶対に世襲はない」と公言している。柳井氏は長男の一海氏、次男の康治氏がファーストリテイリングの取締役に就任しているにもかかわらず、世襲をしない考えのようだ。
世襲は後継者選びの選択肢の1つのはず
例えば、アジアの華人系コングロマリットを見れば、インドネシア最大級の財閥シナルマス・グループのように、子供を厳しく育て、海外でさまざまな経験を積ませ、子供たち同士が争わないように、事業分野別の子会社を設立し、それぞれの子供たちに得意分野を任せ、スムーズな世襲を行っているところがある。
また、今のトヨタ自動車を見れば、3代目の豊田章男氏が2009年に就任して以降、長期政権を樹立し、自動車産業の今後を占うCASE(コネクテッド・自動化・シェアリング・電動化)に向けて会社全体の大きな改革を進めている。その方向性で会社もまとまっているように評価できる。
創業家の豊田家は決して多数の株式を所有しているわけではない。だが、豊田章男氏が、柳井氏のいう「この人のいうことなら聞いてもいいと思える人」になっている。
このように、世襲にはよい例もある。それらを見習って、今回取り上げた経営者たちも、正々堂々と世襲も選択肢の1つとして考えるのもいいのではないだろうか。
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