スペースバリューで表出した元社長との深い溝 対立の根底にあるのは第三者委員会の報告書

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会社側に送った請求書面によれば、マレーシアで開発・運用予定の立体駐車場の建設コストの一部が工事代金以外に使われたのではないかとする疑義、長崎営業所で工事原価の付け替えがあったこと、レンタル工事未払金勘定の残高に相手先などの内容が明確でない残高が存在していることについて、SVHが特別調査委員会を設置(2019年2月)。特別調査委員会は十分な調査を行い、その役割を果たした。

にもかかわらず、鈴木氏ら3人の取締役は第三者委員会の設置が必要だと主張。第三者委員会に報酬として3億2000万円を払ったが、第三者委員会の設置はそもそも不要で、報酬は不必要な金銭の流出だったというのが森岡氏の主張である。3人の取締役が善管注意義務や忠実義務に違反したことは明白で、SVHに対する損害賠償責任を負っているとしている。

第三者委員会に支払った報酬の3億2000万円に、調査報告書を公表したことによる株価下落影響分から算出した13億8670万円を合わせた17億0670万円の損害賠償の提訴請求を森岡氏は行っている。

名誉毀損で約11億円の損害賠償を求める

もう1つのアクションは、2020年2月5日に森岡氏が鈴木氏ら3人の取締役に対し、名誉毀損で11億3293万円の損害賠償を求めた通知だ。第三者委員会の調査報告書が公開されたことで、森岡氏は名誉を著しく毀損されたとしている。

森岡氏の代理人である河合弘之弁護士がSVHに送付した通知文には、第三者委員会はもともとの調査対象事実の範囲と無関係に、森岡氏の資質を検証するなどとし、反市場的勢力でもない人物との交際関係であるとか、プライベートの携帯電話における女性との送信記録など個人のプライバシーに関わる事実関係を取り上げたこと、森岡氏の経営姿勢について一部の取締役等の意見のみを採り上げ、あたかも問題があるかのように指摘するなどしたことを挙げ、調査報告書の公表によって「通知人(森岡氏)が上場企業の経営者としての資質を欠くものと摘示・評論し通知人の名誉を著しく毀損することは明らか」としている。

また、反市場的勢力・反社会的勢力の密接交際者との交際であるとか、粉飾を指示したなどと調査報告書に記載したことについて、「全くの事実誤認であったことは、令和元年6月27日開催のSVHの株主総会においてスペースバリューホールディングス取締役も自認しています」としている。

東洋経済が入手した2019年6月27日の株主総会の録音記録によれば、「会社として、森岡前代表は反社会的勢力との付き合いがあると認定したのか」という株主の質問に対して、「会社独自の調査機能を持っているので、個別案件に関して調査を依頼しました。われわれとしては『(森岡元代表の交友関係の中に反社会的勢力の)該当なし』と会社として定義しております」と回答している。

【2020年4月30日17時10分追記】株主総会で「該当なし」と発言したとの記述について、これは総会の音源など複数の取材に基づいて記述したものです。記事配信後、SVHが保有する音源の確認要請があり、取材の結果、総会の場で「該当があり」と聞こえる音声を確認しました。

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