「新型コロナ」は国際協調の契機となりうるのか 「感染症協力」をめぐる国際政治と「地政学」

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どの国家にとっても、最も重要である国の存立を脅かすものとして、主に他国による軍事的攻撃が想定されているが、感染症の蔓延は軍事的攻撃に勝るとも劣らない影響をもたらしうることを、改めて認識させられる。

もちろん、北朝鮮による軍事的挑発など、周辺国は周到に有事に備え続けねばならないが、新型コロナウイルスの感染拡大を許せば、最悪、有事にも適切に対応できない事態を招きうるからだ。

協調の契機になるのか

感染症が各国の安全保障に影響を与えうるということは、感染症に対して、政治指導者による、政治的な関与が増えることを意味し、国際社会全体で見たとき、そこに国際政治が反映されるようになる。

これが、現代における感染症の第2の特徴である。

新型コロナウイルスへの対応をめぐっては、WHOは分担金負担率の多い中国やアメリカの意向を踏まえざるをえないし、核開発をめぐるアメリカとイランの対立、貿易をめぐる米中対立や中台の緊張関係などが、反映されているのはそのような特徴によるものである。

ただ、感染症への対応に国際政治が影響するということは、何も悪いことばかりではない。

感染症の管理は国際社会において、数少ない共通項となるので、関係国の協力を深める貴重な契機となる。実際、そのような期待は、歴史的にも幾度となく試されてきた。

戦前の日本は1933年に国際連盟を脱退した後も、感染症の管理をめぐって、連盟の保健機関との協力を続けたのだが、そのことは、当時の国際連盟の関係者や、日本国内の一部の国際協調派から、日本を国際社会にとどめるための最後の砦として期待された。

しかし、満洲事変をめぐる日本と国際社会の亀裂はあまりにも大きく、残念ながら、保健協力は砦として機能しなかった。

冷戦期の米ソの間にもポリオをめぐって協力関係が築かれた。1950年代初頭、ソ連ではポリオの患者が急増、1953年にスターリンが亡くなると、ソ連の当局者はポリオ対策に関して、国際協力を模索するようになっていた。

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