独身か有配偶かで異なる男女の「人生」の長さ 寿命や死因データで「ソロ生活耐性」を分析

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これは「有配偶女性が独身女性より早死にする」というより、「女性のほうが一人で生きるソロ生活耐性が強い」とみるべきでしょう。例えば、孤独死はほぼ元既婚の高齢男性で占められるという事実からも、それは読み取れます。夫は、定年退職してしまうと外部コミュニティが妻だけになってしまいます。

一方、妻は、普段からママ友などの夫以外の外部コミュニティの充実化を図っているという違いも大きく影響していると言えるでしょう。言い換えれば、「男は職場や家庭など固定の居場所に依存し、女は子ども、友人など人に依存する」という違いだと考えられます。

いずれにしても、有配偶なのか、独身なのかによって、このように主たる死因も違えば、死亡の多い年齢層も違うというのは興味深い結果です。男女別や年齢別だけで統計を見ていると発見できないポイントです。寿命や死因に配偶関係という環境要因が影響していることは間違いないでしょう。

未婚者は社会のフリーライダーか

未婚化の話題では、既婚者から未婚者に対して以下のようなコメントが寄せられることが数多くあります。

「未婚者が生涯独身で過ごそうが知ったことではないが、結婚もせず、子どもを産まず、高齢者になった未婚者たちを支えるのが、自分たちの子どもたちだと思うと我慢ならない」と。

まるで、未婚者たちは全員社会のフリーライダーだといわんばかりですが、どうやらその指摘は間違いのようです。未婚だろうと、働いて税金を納めている以上、国民としての義務は果たしています。加えて、自身の年金もコツコツと積み立ててきました。

しかし、未婚男性の半分が66歳までに亡くなっているという事実からすれば、例えば、年金受給開始時期が65歳だとすると、ほとんどその年金を受け取らずに半数が力尽きてしまうということになります。フリーライダーどころか、ほかの皆さんのため社会のために尽力していたとも考えられるわけです。

とはいえ、短命な未婚男性が不幸だったとも言い切れません。自分の好きなものに積極的にエモ消費をして(『独身を幸せにする「エモい」という感情の正体』)、太く短い人生を本人として楽しめたのなら、それはそれで豊かで幸せな人生なのかもしれません。が、未婚男性の皆さん、くれぐれも食生活・運動など生活習慣には多少なりとも気をつけていただければと思います。

荒川 和久 独身研究家、コラムニスト

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あらかわ かずひさ / Kazuhisa Arakawa

ソロ社会および独身男女の行動や消費を研究する独身生活者研究の第一人者として、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌・Webメディアなどに多数出演。著書に『「居場所がない」人たち』(小学館新書)、『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』(ぱる出版)、『「一人で生きる」が当たり前になる社会』(ディスカヴァー携書)(ディスカヴァー携書)、『結婚滅亡』(あさ出版)、『ソロエコノミーの襲来』(ワニブックスPLUS新書)、『超ソロ社会』(PHP新書)、がある。

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