武田の宣伝に倫理違反、臨床試験自体は公正だ 猿田享男・慶応義塾大学名誉教授に聞く
──掲載自体が不適切だったと武田薬品が認めた「日経メディカル」(2006年11月号)の報告会の記録には、猿田名誉教授のコメントや学会発表に基づくグラフがある。
06年10月の国際高血圧学会の発表後、研究に参加された先生方に行った報告会での発表データを基に、武田薬品の企画広告が作成されていたことを最近になって知った。学会発表の情報は、学術論文として正式発表されるまでに修正が加わることが多い。そのため、正しくは論文発表後に宣伝を行うべきで、少なくとも論文が出てからはそれを用いなければならない。
──だが、武田薬品は学会発表時の情報を7年以上も販促資材として使い続けていた。
同社の担当者から最近、連絡とお詫びがあった。学会開催後の報告会での私の発言内容を企画広告に用いていた。それを広告してよいという契約をしたかは覚えていない。
──そこでは猿田名誉教授のコメントとして、36カ月以上、カンデサルタンを投与した場合、比較対照の薬と比べて、心血管系の病気の発症が低下していく可能性があるという旨の記述がなされている。また、36カ月で比較薬よりも効果が上回る可能性があるとして、グラフで発症率が逆転する箇所を「ゴールデン・クロス」としている。
「ゴールデン・クロス」などという言葉を私が使うはずはありません。(報告会の)原稿チェックの有無は、多忙でよく覚えていない。
──CASE-J試験自体も疑念を持たれています。
誤解してほしくないが、CASE-Jは、エビデンス・ベースド・メディシン(EBM)確立の一環として日本高血圧学会が後援して取り組んだ、いわばナショナルプロジェクトだ。ノバルティス ファーマが関与した一連の医師主導臨床試験とは位置づけがまったく違う。武田薬品からは奨学寄付金として試験実施に必要な研究費の支援を受けたが、口は出さないでくれと強くお願いし、了承してもらった。
──猿田名誉教授が監修者の一人となった書籍『CASE-J物語』では、武田薬品の社員が「(CASE-J試験の)システム構築の実質上責任者となっていた」とある。
そのあたりは、試験の運営を委ねられていた京都大学EBM研究センターに聞いてほしい。私の知るかぎりでは、不適切な関係はなかった。
(週刊東洋経済2014年3月22日号<17日発売>、「この人に聞く」より)
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