アイルランドの魅力は法人税率だけではない リンクトイン、ドロップボックスが進出するワケ

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2010年、財政赤字に苦しむアイルランドは信用不安により資金調達をできない状況に陥り、IMF(国際通貨基金)やEU(欧州連合)に救済を申請。救済プログラムの元で緊縮財政を行い、財政再建を実施。2013年12月15日には救済プログラムから脱却できるところまで漕ぎ着けた。国際機関の後ろ盾なしで、市場から資金調達をできるようになるのだ。
アイルランドの財政再建を支えたのは2010年以降も衰えなかった海外からの直接投資。EU最低の12.5%という法人税を武器に多くの企業を呼び込むことに成功している。企業誘致の責任者である政府産業開発庁(IDA)のバリー・オリアリー長官に、アイルランドの魅力などを聞いた。

――アップル、グーグルなど米国の著名企業がアイルランドに進出している。アイルランドは「米国企業の欧州拠点」というイメージがある。

たしかに米国企業は現在、直接投資のおよそ70%を占めている。最近では欧州、アジアからも増えているが、それでも主体は米国企業だ。

その理由はアイルランド政府産業開発庁(IDA)が力を入れている分野では、米国企業がリーダーシップを発揮しているからだ。われわれが注力している分野は4つあり、その4分野だけで全投資の85%に及ぶ。1つ目がICT(情報通信テクノロジー)関連、2つ目がライフサイエンス関連で、製薬、医療機器などの分野だ。3つ目が金融関連の企業。それから4つ目がデジタルメディア、デジタルコンテンツ、ソーシャルメディアなどの新しい産業だ。

武田、アステラスなどが進出

もちろん米国企業だけではなく欧州の著名企業も進出している。いくつかの企業名をピックアップすると、ノバルティスファーマ、サノフィ、アリアンツ、SAPなどがアイルランドに投資をしている。

日本企業も多い。たとえばライフサイエンスの分野であれば武田薬品工業、アステラス工業、グッドマンが拠点を開設している。ICT関連で富士通、アルプス電気、NTTが進出しており、金融サービスセクターの中ではSMBC(三井住友銀行)が積極的だ。航空機のリーシング事業、国際金融サービス、IT関連の開発などを手がけている。ソーシャルメディア、デジタルメディア関連では楽天の子会社であるkobo(コボ)、リクルートが買収した米インディード、ガーラがアイルランドに拠点を設けた。

最近は中国、インドにも事務所を開設し、アイルランドへの進出をサポートしている。中国のファーウェイ、インドのウィプロなどが進出している。

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