アイルランドの魅力は法人税率だけではない リンクトイン、ドロップボックスが進出するワケ

拡大
縮小

――4分野に力点ということだが、そのうちICTが先行している、という理解でいいか。

そのとおり。今から20年前を振り返ると、最大の海外からの直接投資元というのは、Tシャツなどを生産していたフルートオブザルームという会社だった。ちょうど同じ時期に、インテルがアイルランドに徐々に工場の投資を始める時期だった。ここからICTの集積が始まっていったので、4分野のうち先行したのはICTだ。

1060社以上が進出

――アイルランドへ投資をする魅力とは?

どのような企業も進出国を決める際には多くの要素を勘案するが、アイルランドには、4つのT、4つのEという基本的な強みがあるとアピールしている。4つのTのうち最も優先順位が高いのがタレント(人材)。どの企業も、投資を検討する際にどのような人材レベルがあるのかを最優先課題として考える。2つめのTがトラックレコード(実績)。つまり、同業他社が過去にどのような投資をしたか、そしてその後の再投資を行っているのか、という点は投資判断をする上で重要だ。アイルランドにはすでに1060社以上の企業が進出しており、事例が豊富だ。3つめのTはタックス。12.5%の低い法人税は大きなポイントだ。4つめのTがテクノロジーだ。

――4つのEとは。

まず1点目がEU加盟国であるということ。2つ目のEは、英語を使用できること、三つ目のEは、Ease of businessということでビジネスのやりやすさ。4点目のEがエデュケーション(教育)だ。4つのEはいわばソフト面の魅力といえる。

さらにこうした基本の部分だけでなく、個別具体的に産業クラスターを作るための投資を行っている。たとえば製薬企業を助けるために、IDAは6000万ユーロを投資してリサーチとトレーニングのためのセンターを開設した。また豊富な電力、水を確保できる工場団地をアイルランド全国で6カ所整備した。

――魅力の中では法人税率が12.5%という点は大きい。財政危機の際にもこの税率を維持したが、引き上げるべきとの声も強かったのでは。

ここで手がかりになるのは、GDP(国内総生産)に占める法人税の割合だ。EU全体の平均値はGDPの2.6%。それに対して、アイルランドは2.8%だ。ちなみに英国は3.1%だ。法人税率が30.6%と高いフランスの場合は8~9%だ。われわれが適用する法人税率12.5%は低いものではあっても税収という点ではEUの平均値を上回っている。つまり妥当な水準であると考えている。低率の法人税により海外からその投資を呼び込み、その投資によって、国民が大きな便益を受けているという状況は、国民に理解されていると思う。

次ページ雇用に繋がっている
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT