ウイルスの遺伝子による系統樹解析では、MERSコロナウイルスの起源はコウモリのウイルスと推定されるという。しかし人とコウモリの直接的な接触はほとんどなく、コウモリが人への感染源とは考えにくい。
そこで人と接触の可能性があるさまざまな動物を調査した結果、中東におけるヒトコブラクダがMERSの中間宿主として働いている確率が高くなった。
また、ミルクや尿にもウイルスが検出されました。ラクダには軽症の風邪を起こすような病原体ですが、飼育者などのラクダと密な接触をする人は、MERSウイルスを感染伝搬される可能性が考えられます。
また、ヒトコブラクダからのMERSコロナウィルスの遺伝子とその地域のMERS感染者から取られたウイルスの遺伝子の特徴が一致することからも、ラクダから人への感染が強く疑われます。
さらに、中東地域での人の血液中のMERSに対する抗体調査では、ラクダの飼育者にMERS抗体保有率が高いことも報告されました。抗体を持っているということは、過去に感染した経験があると考えられます。(31ページより)
こうした事実から、まずは飼育者などラクダと濃厚な接触をする人がMERSコロナウイルスに感染し、以後、人から人への感染が起こっていると推定されたわけだ。
なお、日本では30頭ほどのヒトコブラクダが飼育されているが、MERSコロナウイルスの遺伝子は検出されていないという。
感染経路
2014年、サウジアラビアでMERSに感染したマレーシア人は、ラクダのミルクを飲んだあと、8日目にMERSを発症している。このように中東では、ラクダのミルクを飲んでMERSウイルスに感染したと考えられる事例が複数報告されているそうだ。
よって、MERSの発生している中東地域では、未殺菌のミルクや生肉などを摂ることは避けたほうが賢明だ。
MERS患者が多く発生しているサウジアラビアには、有名なジャナドリア祭のラクダレースがあるが、そうした場でのラクダと人との密な接触は、MERSウイルス感染のリスクを高める。
そのため岡田氏は、観光でラクダに乗るという行為は避けるべきだと主張している。また、ラクダは威嚇で唾を吐くこともあるため、距離を開けることも必要だ。
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