減速感強まる欧州経済と止まらないユーロ売り 次の焦点は「アメリカが利下げに動くのか」

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対米金利差という観点で見れば米金利の下げ幅のほうが大きく、例えば米独10年金利差は昨年半ばからはっきりと縮小している。素直に考えればユーロドルは上昇するはずだが、むしろ下落傾向を強めているのは、ひとえに「マイナス金利の深さ」を理由に、購入対象として検討されないということだろう。

こうした状況をつきつめると、「マイナス金利解除がなければドル高が続く」という結論になる。しかし、だとすれば為替予想も基本はドル高一色とならざるをえない。もうドル高局面は2014年6月以降、5年半も続いている。これは歴史的にみて異様な長さだが、2014年6月といえば、ECB(欧州中央銀行)がマイナス金利導入を決定した月でもある。偶然ではないのかもしれない。

なお、「マイナス金利解除がなければドル高が続く」ということは、裏を返せば、マイナス金利政策が通貨安政策として機能していることの証左である。今年、6年目に入ろうとしているドル高局面を前にトランプ政権、米国の通貨政策が、こうした状況をいつまでも放置するのだろうか。現状のドルは高すぎるといえるゾーンに入ってきたように思えてならない。

※本記事は個人的見解であり、筆者の所属組織とは無関係です

唐鎌 大輔 みずほ銀行 チーフマーケット・エコノミスト

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からかま・だいすけ / Daisuke Karakama

2004年慶応義塾大学卒業後、日本貿易振興機構(JETRO)入構。日本経済研究センターを経て欧州委員会経済金融総局(ベルギー)に出向し、「EU経済見通し」の作成やユーロ導入10周年記念論文の執筆などに携わった。2008年10月から、みずほコーポレート銀行(現・みずほ銀行)で為替市場を中心とする経済・金融分析を担当。著書に『欧州リスク―日本化・円化・日銀化』(2014年、東洋経済新報社)、『ECB 欧州中央銀行:組織、戦略から銀行監督まで』(2017年、東洋経済新報社)。

※東洋経済オンラインのコラムはあくまでも筆者の見解であり、所属組織とは無関係です。

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