炸裂する不動産金融「2010年問題」 デフォルト連発のノンリコースローン
市場関係者は「CMBSをオリジネーターが買い戻す行為は、米国でも異例。しかも金額が大きく、場合によってはシニアも毀損しかねないのに、ずいぶん思い切ったことをする」と驚く。一方で「新生銀が自行で保有するメザニンを守るために、シニア部分の証券化であるCMBSを買い取るのでは」「担保処分の時間を稼ぐためでは」「デフォルト金利を前提にした投資妙味を狙ったものか」と、買い戻しの要因について諸説が浮上する。11月にも実施されるといわれる金融庁検査も何か影響しているのか、との声すら出る。
PCPの推定売却額について、エクイティの全損は市場関係者の一致する見方だが、メザニンやシニアの毀損度合いについては見方が分かれる。流動性の枯渇した現在の市場で担保処分を急げば、メザニン部分の毀損が拡大する可能性は否定できない。関係者は「メザニンなどは財務上の処理は終わっている。それよりも全投資家の意向を汲みつつ担保処分を進めるのはなかなか難しい。全額を買い戻したほうが機動的に進めやすい」と話す。
当然だが、投資家側は「買い戻しに応じない理由はない」(金融機関)。シニアも毀損しないとは言い切れず、何よりCMBSの利率は、発行価格の6割(705億円)を占めるA号は1カ月LIBORプラス30bp。「リスクを考えると、このスプレッドなら他商品に乗り換えたほうが、合理的」(同)だからだ。また「今後、外資系がオリジネートしたCMBSは次々とデフォルトし、オリジネーター不在のまま、棚ざらしで混乱する可能性がある。それを未然に防いだ」と評価する向きもある。
肝心のPCPの売却先に関して、憶測レベルでは三菱地所や三井不動産、あるいはダヴィンチ側が購入した香港パシフィックセンチュリーグループによる買い戻しやドイツ系の投資家などが浮上するが、やはり売値次第。関係者は「世界中から買いがPCPに集中している。まったく心配はない」とする。CMBS買い戻しは10月内にも実施されるもようだが、明確な出口戦略はあるのだろうか。