炸裂する不動産金融「2010年問題」 デフォルト連発のノンリコースローン
さらにサブプライム危機顕在化以来、しばらく消極姿勢を続けてきた邦銀勢が、ここに来て不動産NRLの供給に前向きになったためだ。
メガバンク、信託などいわゆる大手行で、この上期にNRLの残高を大幅に増やした銀行は皆無。いずれも横ばい、もしくは漸増だ。だが、「本来はアクセルを踏みたかったが、不動産取引が少なく、計画未達に終わった。下期も増やしたいが、どうなるか」(大手銀行幹部)。
邦銀が不動産回帰を進めるのは、不況下で収益機会が減少の一途をたどっているためだ。一方で、不動産ノンリコースローンをめぐる環境は大きく変わった。メガ、信託の典型事例で言えば、07年前半にLTV(借入比率)70%台、スプレッドが50~60bp、手数料込みの出来上がり80bpといったNRLが、現状ではLTV50~65%前後、スプレッド100~200bp、出来上がり150~250bpへと利幅がハネ上がった。約定弁済や配当停止条件の強化など、融資条件も銀行優位に転換した。J-REITの極端な事例は、プロスペクト投資法人。社債50億円償還資金をあおぞら銀に頼ったが、スプレッドは500bpを超えている。市場関係者は「手数料込みでは年間1000bpを超えるのでは」と憶測する。
既存先のリファイナンスについても、基本的に全行とも応じる姿勢だ。全額応じるケースは希有で、担保価格の下落やLTV水準の低下で追加出資を求める、融資条件を厳格化するなどで対応している。09年上期の前半までは、リファイナンス案件に関してクラブディール的に他行参加を募るケースが多かったが、後半にはこれも過少となった。融資機会の奪い合いが始まっているということだが、早くも需給バランスから「今上期にスプレッドは天井をつけた」(メガバンク)との声も聞かれる。