炸裂する不動産金融「2010年問題」 デフォルト連発のノンリコースローン

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大量CMBSが償還不能 「2010年問題」の脅威

モルガン・スタンレー証券がオリジネートした総額は829億円の「Jロック38」。昨年6月にCMBSの裏付けローンで初のデフォルト案件になり、話題になったのは、この中で劣後するクラスD社債(発行額48・5億円)だ(小誌08年夏号参照)。10月に12.8億円の損失が確定した。格付け会社のフィッチレーティングスの発行時の格付けは「BBB」だったが、複数回にわたって格下げが行われ、10月19日には「D」まで引き下げられていた。すでに裏付けローンだけではなく,CMBS自体も毀損が始まっている。

フィッチが公表したレポートによれば「08年12月末日でフィッチが格付けするCMBSの裏付けローンのデフォルト率は件数ベースで3.7%(残高ベースで1.6%)であったところ、09年9月末日には件数ベースで13.9%(残高ベースで14.4%)まで上昇」した。一方、今09年は1~8月の8カ月間に返済期日が到来した裏付けローンのうち件数ベースで約56%(金額ベースでは66%)がデフォルトした。残高および件数のデフォルト率に関して、12月末までに件数ベースで16~22%(残高ベースで13~21%)程度までの上昇を予想する。

フィッチの格付けは大半が外資系がオリジネーターである点を差し引く必要があるが、数字上から見るかぎり、CMBSの裏付けローンは完全に「炎上」状態だ。7月の段階ではフィッチは2010年までに弁済期日を迎えるCMBSの裏付けローン総額を5862億円と想定。同様にムーディーズの資料では、10年に1.1兆円、11年に8400億円の弁済期限を迎えるとしている。

フィッチは不動産価格を07年終わりごろと比べ、最大で40%下落したと見ている。その中で、大量の裏付けローンが期日を迎え、リファイナンス不能になり、物件の投げ売りと地価急落を招く--。これが「2010年問題」だが、現状では火を噴くまでに至っていない。これはテール期間に入っているため。通常、CMBSは裏付けローンの弁済期限が到来しても、その後、2年程度はテール期間が設けられ、この間に回収を行うことになる。キャッシュフローを生むオフィスビル等であり、かつ現在の市況を考えると、当然ながら物件は市場に放出されず、当面は売り圧力とはならない。その意味で「2010年問題」は「2011年問題」あるいは「2012年問題」へと後ろ倒しされる可能性がある。

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