炸裂する不動産金融「2010年問題」 デフォルト連発のノンリコースローン
デフォルト(債務不履行)を前提としていたかのように、投資家に、新生信託銀行の名義で封書が届いたのは2009年9月の終わり。内容は、新生銀行が「ハーベスト・ツー信託」を、発行金額で買い戻すという、まさに「異例」と思えるものだった。
「ハーベスト・ツー信託」とは、オリジネーターを新生銀行、受託者を新生信託銀行として2007年11月に組成されたCMBS(商業不動産ローン担保債権)で、20~30社に及ぶ投資家に販売された。発行金額は1120億円。裏付け資産は、東京千代田区にあるオフィスビル「パシフィックセンチュリープレイス丸の内」(PCP)を担保とするノンリコースローン(NRL)だ。
まさかの、新生銀によるCMBS買い戻し
PCPはダヴィンチホールディングスの運用するファンドが旗艦物件として保有していた。取得価格は2000億円強(オフィス部分のみ取得)。このPCP向けのデット部分1700億円強がリファイナンス不能になり、9月25日にデフォルトしたのは記憶に新しい。
ローンがデフォルトしCMBSも法定最終償還日を11年9月30日とするテール(返済延長)期間に突入した。物件はダヴィンチの手を離れ、債権者(受託者である新生信託銀行)、サービサーの手で、基本的に償還日までに物件の処分等が行われ、CMBS投資家のために最大限、回収が図られることになる。
だが、この環境下で物件売却が可能か。どこまで取得価格が毀損するのか。業界の関心が集まっていた。そこへ降って湧いたようにオリジネーター・新生銀によるCMBS計1120億円の巨額の買い戻しだ。
PCPのストラクチャーは、取得価格2000億円強のうち1120億円のシニア部分は新生銀行が融資を行い、CMBSとして証券化された。一方、エクイティは200億円台後半。中間の600億円強は2トランシェに分かれ、関係者が「優先メザニン」などとも呼ぶ優先部分が300億円強、劣後部分が300億円弱とされ、優先部分はメリルリンチが融資を行い、証券化はされずローンのまま新生銀を含む数社に売却されたという。新生銀を含む可能性もある。一方、劣後部分は新生銀が融資を行い、オプション取引を通じ、メリルが債務保証を行ったとされる。