「中国から見た日本」の感染対策が甘すぎる理由 日本人駐在員は帰国かとどまるか判断に迷う

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 ただ、どうにももやもやすることがある。「駐在員が続々帰国する中、現地採用の私たちは枠外です」。田村さんの同僚(現地採用)は春節中に日本に帰国したが、中国にいた駐在員が帰国するのと入れ違いに、2月初めに中国の職場に戻った。現地採用社員の所属は中国法人のため、本社からは帰国指示を出さないと説明されたという。

現地採用者は有給を使って一時帰国する

 田村さん自身も、外務省の一時帰国の呼びかけを受けて、本社に確認した。「やはり、同僚と同じ説明でした。現地採用は帰国指示の対象外だと。それに加えて、帰国するなら日本での在宅勤務は認めないので、有休を使ってくださいと言われました」(田村さん)。

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 今回取材したのは、全員が名の知れた大企業の社員だ。そしてその全員が、中国現地で起きていることに日本の本社の対応が追いついていないと訴えた。日本ではまもなく中国と同じことが起きそうなことだという意識も薄い。北京で働く井上さん(仮名)は「日本の本社も、今は平時じゃなくて非常時だという意識を持ってほしい。政府に言われたからという受け身の対応を見直すべき」と切実に訴える。日本でさらに感染が広まれば、中国以上に手が付けられなくなるだろう。

浦上 早苗 経済ジャーナリスト

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うらがみ さなえ / Sanae Uragami

早稲田大学政治経済学部卒。西日本新聞社を経て、中国・大連に国費博士留学および少数民族向けの大学で講師。2016年夏以降東京で、執筆、翻訳、教育など。中国メディアとの関わりが多いので、複数媒体で経済ニュースを翻訳、執筆。法政大学MBA兼任講師(コミュニケーション・マネジメント)。新書に『新型コロナVS中国14億人』(小学館新書)。
Twitter: @sanadi37

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