武漢に心当たりある彼女が窓口で受けた仕打ち 1月30日の発熱から今も体の調子が良くない

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日本でもさらなる感染拡大が懸念されています(写真:AP/アフロ)

厚労省の検疫官、救急隊員、医師――。万全の防御態勢を求められる職種の人々が、次々に新型コロナウイルスによる肺炎に感染している。

感染の経緯を説明する厚生労働省などの記者会見では、「想定外」との言葉が出ている。一方ですでに7万人以上が感染し、複数の都市が封鎖されている中国では、1月から医療従事者の感染も報告されている。そこで当局はウイルスから医師を守るためにさまざまな対策を取っている。

また2月17日の企業活動本格再開を控え、中国政府は発熱かせきの症状がある人の公共交通機関の利用を禁止するなど、市中感染も警戒する。そこまでやっても感染者が次から次に出てくる状況が隣国で起きているのに、中国よりも時間があった日本で、なぜ「想定外」が相次いでいるのか。

武漢の人と「間接接触」し1週間後に発熱

関係者のプライバシーに配慮し詳しくは控えるが、筆者の知り合いの40代女性は1月30日から微熱とせきが続き、2週間が過ぎた今もせきが止まらないという。仕事柄中国人との接触が多いとのことで、大多数の日本人よりもリスクが高いはずだが、それでも現行基準では、新型肺炎検査の対象外なのだ。

彼女の体調について簡単に整理すると、1月30日に発熱した。体温は38度を超え、鼻水とせきが出た。その時点でいくつかの可能性を想定した。まずは風邪。そしてインフルエンザ。知人が1月15日にインフルエンザに罹患(りかん)しており、うつされたかもしれないそうだ。最後の可能性が新型肺炎だ。

彼女は1月16日から27日にかけて、日本在住の中国人との打ち合わせや会議が4回あったという。4度の中国人との接触でとくに不安の種になったのは、武漢が閉鎖された1月23日に参加した仕事上の打ち合わせだ。

相手は中国人だが、この半年は東京に滞在しており、「新型肺炎が怖いから、春節も中国に戻るのをやめました」とのことだった。2時間弱の打ち合わせが終わり、その相手が別れ際に言った。

「昨日もこの会議室で旅行会社の人と打ち合わせをしていたんですけどね、その人が帰った後に武漢出身者だと聞いて、ドキッとしました」

その1週間後に彼女は38度の熱が出た。その頃には中国全土でウイルスが猛威を振るっていた。厚労省はなおも「人から人への感染は考えにくい」との姿勢だったが、中国では専門家が「人から人への感染が起きている可能性が高い」と認めていた。

彼女は武漢の人と直接接触したわけではないので、新型肺炎検査の対象外だとわかっていたが、インフルの心配もあり、翌31日に近所のクリニックに行った。

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