武漢に心当たりある彼女が窓口で受けた仕打ち 1月30日の発熱から今も体の調子が良くない

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武漢市や湖北省で感染者と死者が突出して多いのは、医療体制の崩壊が要因と見られており、中国政府は、「第2の武漢」を出さないために、医療資源の確保をとくに重視している。患者の不注意や悪意による医療従事者への感染拡大は、刑事罰の対象になるほどで、2月15日の1日だけでも、以下の2件の刑事案件が発表された。

ケース1:上海外部で新型肺炎の疑いを持たれ、自宅待機と経過観察を命じられていた男(62歳)が、勝手に上海に移動し、せきの症状で病院を受診。来院前に解熱剤を飲んでいたため、体温測定で異常を検知できず。遺伝子検査で新型肺炎と診断され、ただちに専門病院に移送された。隔離が遅れたため、病院は外来診察を取りやめ、消毒を余儀なくされた。多くの医療従事者も隔離対象となった。警察は男の回復を待って逮捕する方針。

ケース2:海南省で、せきや発熱の症状が出た男が、武漢在住者との接触歴を隠して病院を受診。新型肺炎と診断された。この男は感染確定前の点滴治療中に、口に含んだ水を床に吐き出したり、看護師と口論するなどして、感染の危険性をさらに引き上げ、医療従事者数十人を隔離に追い込んだため、治療終了とともに防護服を着た警察官に連行された。

同じ日には、武漢の一般診療所で働くスタッフが新型肺炎で亡くなったことも報じられた。中国で報道されるのは極端な事例であり、うつすつもりがなく医療従事者に感染させてしまった人は大量にいる。感染の可能性がある人に接した医師や検疫官が、十分な防御をせず感染してしまうのは、想定外とは言えないのだ。

人の接触制限で感染拡大を抑え込む中国

実のところ、中国の検査網も完璧ではない。感染者との接触が明確な人は早々に隔離措置を取られるが、そうでない場合、発熱した人はまず発熱外来を受診し、新型肺炎の疑いがあると判断されると、検査を受けることになる。感染者との接触歴が明確でなく、症状もない人を捕捉することは難しい点は、日本と同じだ。

ゆえに中国は、人々の生活を制限している。地域によって詳細は異なるが、3人以上で集まることや、向き合って食事をすることを禁止。列に並ぶときに2メートルの間隔を開けることを要求するなど、人々の接触を極力避けるよう指示を出し、その姿勢は中国の大部分の都市で企業活動が本格化する17日を前に、一層厳しくなった。

さらに中国政府は15日、せきや発熱の症状がある人の公共交通機関の利用を禁止した。中国人民銀行も同日、使用された紙幣を消毒したうえで、一定期間“隔離”することを発表した。

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