新型肺炎予防で露呈した日本の医療の「盲点」 「かかりつけ医」制度の未整備があだになった

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なぜ、こうした事態に陥ったのか。

それは、日本にかかりつけ医制度が定着していないからである。

われわれが病気やケガをして「病院に行く」というが、厳密にいえば、軽度の病気やケガなのにいきなり病院に行ってはいけない。というのも、病院とは、20床以上のベッド(病床)を持って入院患者も受け入れられる医療機関と定義されている。19床以下の病床しかない医療機関は、「診療所(クリニック)」である。多くの診療所に入院機能はなく、外来診療のみを行っている。医療機関は、病院と名乗るのか診療所と名乗るのか、この定義に基づき厳格に名称を付けている。

かかりつけ医不在のまま感染拡大に直面

その観点から言えば、病院は入院患者を受け入れるが、診療所は外来診療を担う、という役割分担が想定される(もちろん、人口が少ない地域ではこうした役割分担が十分に行えない場合もある)。

したがって、この違いを理解すれば、重篤な自覚症状がなければ、まずは「診療所に行く」と言うべきなのだ。いきなり大病院に駆け込んではいけない。

医学の素人である患者は、自分の病状を的確に判断できない。日ごろから自らの身体状態をよく知っていて、信頼できる身近な医師(いわゆる「かかりつけ医」)がいれば、かかりつけ医に慌てずに相談すればよい。かかりつけ医は、自宅で静養すれば治る程度のものなのか、深刻な病気の予兆なのかを判断してくれる。必要があれば、大病院への紹介もしてくれる。

ところが、わが国の多くの人には、そうしたかかりつけ医がいないのが現状だ。そんな状態で、新型コロナウイルスの感染拡大の懸念に直面してしまった。

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