志願者数が増える医学部の知られざるカラクリ 1回6万円の受験料で大学も受験生も損なし

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文部科学省の管轄であるセンター試験の日程は、1月13日以降の最初の土日と決まっており、年によって変わる。今年は1月18日と19日に実施された。私立大医学部の一般入試は1月21日の国際医療福祉大と愛知医科大を皮切りに、2月下旬まで続く。

医学部入試カレンダーを見てみると、1月25日は東北医科薬科大、埼玉医科大(前)、関西医科大(前)、1月26日は北里大、近畿大(前)、川崎医科大、2月1日は東京医科大、日本大(N方式)、久留米大(前)、など複数の大学の試験日が重なっている。

私立大では各大学が試験日程を独自に設定するので、試験日の変更も志願者動向に大きく影響する。試験日の重複によって併願しようと思っていた大学が受験できなくなることもある。どの大学を受験するかで合格率が変わるため、併願プランは上手に組む必要が出てくる。

試験日だけでなく、試験会場にも注意が必要だ。今日は大阪、明日は東京、明後日は愛知といったような日程を組むと体力的に厳しくなり、何日間もホテルに宿泊することで実力を十分に発揮できない可能性もある。同ランクの大学の場合は、志願者がどちらかに集中することもあり、流れを読むのは難しいという。

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今年の私立大医学部では、帝京大の志願者が一番だ。前期募集人員100人のところに7343人もの志願者が集まったが、これには理由があるという。帝京大は1月の下旬に3日連続して試験日があり、受験生は1人最大3回まで受験できるのだ。これは私立大の6年間でかかる学費減額にも話がつながると、医系予備校進学塾ビッグバンの松原好之代表は言う。

「2009年度の帝京大学の6年間の総学費は約4920万円と医学部の中でも一番高額でした。しかし、20年度は約3940万円と、この10年間で約1000万円も減額したことになります。私立大医学部の受験費用はおおむね1回6万円です。定員120人前後の、帝京大医学部の学生から余分に授業料を徴収するよりも、受験生に複数回の受験機会を与えることで得られる収入を選んだと考えられます」

帝京大医学部は2014年度に学費減額に踏み切ったが、この時の志願者数は8334人で前年よりも2967人増えたという。風邪やインフルエンザなど、体調不良で1回目の試験が満足いかないものであっても、あと2回受験できることは受験生にとっても心強いだろう。帝京大医学部に入学し、6年間通うことになる約120人の学生の学費を減額した分と、受験生からの受験料を比べると、帝京大の総収入は減っていないという。

サラリーマンの家庭でも、医学部に進学できる時代に

昨今、多くの私立大医学部が学費を下げているという。理由は一般家庭出身の優秀な学生に入学してほしいから、だといわれている。医学部に入学後も真面目に勉学に励まないと、留年する学生が増える。結果、数に制限のある解剖実習などで弊害が出たり、医師国家試験に受からなかったりする学生も増える。国試合格率を一定程度は維持しないと、私学補助金が打ち切られることになり、大学そのものの危機にもなるのだ。

学費を減額することで、サラリーマン家庭からも医学部を受験する学生が増えた。学費を下げたことで受験者数が増え、偏差値も上がり、優秀な学生が集まるのだ。2009年度と比較した結果、6年間の総学費で昭和大が約340万円、日本医科大が約590万円、藤田医科大も約600万円を減額し、どの大学も受験者が増え、偏差値も上昇したという。

朝日新聞出版アエラムック編集部
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