弘中綾香「まるで空気を読まない」異端児の魅力 神田伯山も認めた「ニュータイプの女子アナ」

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だが、そもそも、弘中以前にはそういうことを自由奔放に言ってくれるアナウンサー自体がほとんどいなかったのだ。前述の『ひろなかラジオ』でゲストとして出演していた講談師の神田伯山は、彼女を新しいタイプの女性アナウンサーとして高く評価していた。

女性アナウンサーというと、今までは2種類しかいなかった。テレビ局に所属して型にはまった仕事をする人と、自由奔放なキャラクターを打ち出してテレビ局になじめず、フリーになってしまう人だ。その点、弘中は局にとどまりながら自由にやっているところが新しい、と伯山は語っていた。

弘中は、女性アナウンサーとして手堅く及第点を取ることに興味がない。本人がたびたび言っているのだが、彼女の本当の夢は「革命」を起こすことだ。革命と言っても、武装蜂起してテレビ局を占拠しようとしているわけではない。テレビという影響力のあるメディアを使って、人々の意識や価値観を変えていきたいと考えているのだ。

この発想自体が面白い。確かに、一介のサラリーマンにすぎない人間が、才能豊かなタレントと肩を並べて人前に出て、影響力を行使してセレブリティーのように振る舞うことができるのは、アナウンサーという職業しかない。

「テレビ朝日のジャンヌ・ダルク」

テレビ業界は衰退していると何年も前から言われているが、実際のところ今でも影響力は大きい。ただのサラリーマンでしかないアナウンサーの顔や名前やキャラクターを何千万人もの視聴者が認識していること自体がその証拠である。そんなテレビのメディアとしての価値を弘中は正確に理解している。

大人の男性同士の恋愛模様を描いたテレビ朝日のドラマ『おっさんずラブ』が大ヒットを記録したことで、世間の同性愛に対する見方がある程度は変わったのではないか、と弘中は考えている。彼女は「革命家」として、人々の意識に影響を与えるようなものを提供していきたい、と本気で思っているのだ。

テレビ業界はいまだに旧態依然とした価値観がまかり通っている世界だ。それを変える可能性があるのは、弘中のような、いい意味で空気を読まない異端児しかいない。

彼女がこの姿勢を貫いて活動を続けていれば、10年、20年経った後には何らかの革命が起きているかもしれない。「テレビ朝日のジャンヌ・ダルク」こと弘中綾香の革命は始まったばかりだ。

ラリー遠田 作家・ライター、お笑い評論家

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らりーとおだ / Larry Tooda

主にお笑いに関する評論、執筆、インタビュー取材、コメント提供、講演、イベント企画・出演などを手がける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)など著書多数。

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