「若者の本離れ」がこんなにも加速した5つの理由 今や「マンガでさえ」昔よりも読まれていない

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「ネットのほうが便利って、どういうこと?」 

すると、Aさんから、これまた衝撃的な見解が飛び出てきたのです。

「だって、その本のストーリーを知りたければ、まとめサイトとか見ればいいじゃないですか?」

「え、まとめサイト?」

「そのほうが早いし、わかりやすいし、便利ですよ」

例えば、ドストエフスキーの『罪と罰』が面白いと、誰かから聞いたとします。すると彼は『罪と罰』で検索し、そのまとめサイトを読んで、内容を理解するのだそうです。

本そのものを読まなくとも、それで『罪と罰』のストーリーはわかるので、それ以上に何が必要なのか、ということでした。

「まあ、それで『罪と罰』の面白さは、少なくとも理解できますよ。それじゃいけませんか?」

彼の言いたいことはわかります。ですが……。僕は読書のすばらしさを、なんとか説明しようとその後も続けました。

角田「いや、読書体験というのは、もっと全然違うものでさ」

Aさん「え、何が違うんですか? 例えば?」

角田「例えば、何気なく読み始めたら、面白いミステリーがあったとするよ。もう続きが気になって気になって、朝まで徹夜で読んじゃったりってことだよ!」

Aさん 「そういうこと、ゲームでしたら、しょっちゅうあります!」

本は楽しい以前に不便

僕ら読書好きの多くは「本を読むと楽しいですよ、人生が変わるきっかけになりますよ」「直接できない体験や、会えない場所や時代の人とアクセスすることができるんですよ」と、本を読まない人に伝えたことがあると思います。

『読書をプロデュース』(秀和システム)書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします。

でも、本を読まない人には、それ以前の問題なのです。読書のよさをいくら言われても、本自体にアクセスすることが面倒なのです。つらいし、時間がかかるし、楽しくないし、よくわからないし、不便だから。

つまり、旅好きな人に「海外旅行は楽しいですよ」と言われても、成田空港に行くのが面倒だからという理由で行かないような。

「いや、角田さんの言っていることは、なんとなくわかりますよ。海外旅行は楽しいんですよね。でも、成田空港って遠いじゃないですか? いちいち成田まで行くの、つらいし、時間かかるし、楽しくないし、よくわからないし、不便じゃないですか。なんでそうまでして、わざわざ海外に行かなきゃいけないんですか?」

こういう感じで、海外に行く前に、そもそも空港に行く前で、彼らは読書を敬遠しているのでした。

角田 陽一郎 バラエティプロデューサー/文化資源学研究者

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かくた よういちろう / Yoichiro Kakuta

バラエティプロデューサー/文化資源学研究者。東京大学文学部西洋史学科卒業後、1994年にTBSテレビ入社。「さんまのスーパーからくりTV」「中居正広の金曜日のスマたちへ」「EXILE魂」「オトナの!」など主にバラエティ番組の企画制作をしながら、2009年ネット動画配信会社goomoを設立。2016年にTBSを退社。映画『げんげ』監督、音楽フェスティバル開催、アプリ制作、舞台演出など多様なメディアビジネスをプロデュース。現在、東京大学大学院博士課程にて文化資源学を研究中。著書:小説『AP』『最速で身につく世界史/日本史』『なぜ僕らはこんなにも働くのだろうか』他多数。週刊プレイボーイにて映画対談連載中、メルマガDIVERSE配信中。

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