生理前の不調に悩まされる「妊活女性」の現状 PMS・PMDDの治療と妊活は両立できるのか?

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伊倉さんは、「1人になりたいのに1人になれないときがいちばんつらい」と話す。放っていてほしいときに気遣いの言葉をかけられたり、自分の作業を途切れさせられるとものすごくイライラしてしまい、「そこまでイライラすることじゃないのに」と自分を責める。感情を制御できないことがつらいから、「1人になりたい」と強く思う。

しかし伊倉さんは、夜眠れないくらい頭痛がひどくなったときに市販の頭痛薬を服用するだけで、病院にかかってはいない。

過去に婦人科に通い、生理痛などに効くとされる漢方を処方され、イライラや気分の落ち込みは少し抑えられた気もしたが、頭痛にはまったく効かなかったので、2カ月くらいでやめてしまった。

そんな伊倉さんは、昨年の9月から、夫の希望で妊活を開始。基礎体温をつけ、排卵検査薬によってタイミングをとっていたが、12月末に夫と大げんかの末中止に。

お互いの将来のことを話し合っていてけんかになったというが、もしかしたら生理前の不調が関係していたのかもしれない。

伊倉さんの場合、月経周期に沿って激しい頭痛やイライラの症状が表れていること。その症状で仕事や家事を休むこともあるとのことから、おそらくPMDDだと思われる。

月経周期に沿って出現する身体的な症状に困っている場合や、年齢が30代前半までの人で、ピルを希望するなら婦人科でもよいが、PMDDの場合は精神的な症状がより強く出るため、精神科や心療内科にかかることをお勧めする。

パニックに陥り自傷行為に走る

中国地方在住、26歳の工藤奈々さん(仮名)は、医療系の専門学校を卒業し、作業療法士として働いている。

同じ職種の夫とは付き合い始めて約1年で結婚し、現在は夫と2人暮らし。
同棲、結婚、引っ越し、仕事でのプレゼンテーションなど、さまざまなストレスが重なった状態が約2年続き、結婚式後にほっとした直後、起き上がれないほどの体調不良に見舞われた。

身体が重怠く、吐き気、立ちくらみ、動悸などの身体症状と精神不安定で内科を受診したが、「異常なし」。婦人科を受診したところ、「ホルモンバランスが乱れすぎている」と医師に言われ、PMDDについての冊子をもらい、日記を書くことを勧められる。数カ月書いた結果、PMDDと診断された。

「自分では生理と関係しているとは気づかず、境界性パーソナリティー障害かと思っていました。夫は受診する前から、私の易怒性や暴力性、自傷行為についておかしいと思っていたようで、もらった冊子でPMDDについて説明すると、『症状が当てはまるね、身体きつかったんだね』とすんなり理解してくれました」

その後、基礎体温と症状を記録するようになり、卵胞期後半から生理までの期間、何らかの身体症状と精神症状が出ることがわかった。

身体症状は、肩こり、筋肉痛、関節痛、頭痛、吐気、立ちくらみ、寒気、浮腫、倦怠感など。精神症状は、不安、イライラ、涙もろくなる、憂鬱、無気力、希死念慮、自責感、動悸、パニックなど。これらがPMDD期間中、毎日違う組み合わせで出現する。

ところが工藤さんは現在、排卵を誘発する薬を使用して不妊治療をしているため、PMDDの治療については、当帰芍薬散と高麗人参、2種類の漢方薬を処方されているのみ。

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