「小中学生全員にPC」、1000万台市場で争奪戦 19年度補正で2300億円、巨額予算に沸く企業

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今回のパッケージに含まれるウィンドウズやオフィスは有料だが、日本マイクロソフト・パブリックセクター事業本部の中井陽子・文教営業統括本部長は、「特別な低価格で戦略的に提供する」と話す。具体的な価格の明言は避けたが、価格が安くなっただけ、教育委員会や学校側が予算を抑えられる。

マイクロソフトのアメリカ本社側も大きな商機と見ている。会見に登壇した教育向け端末のグローバル戦略を担当するジョーダン・クリサフィディス氏は、「日本で設定したパッケージの価格は、世界中どの国と比較しても、最もアグレッシブな(安い)価格体系であり、(1つの国としては)世界でも最大規模の投資となる」と強調した。

教育現場はクロームブックに注目

ここまでマイクロソフトが躍起になるのには理由がある。グーグルの「Chrome(クローム)OS」を搭載したノートPC「Chromebook(クロームブック)」の存在だ。

グーグルの教育事業でアジア太平洋地域マーケティング統括部長を務めるスチュアート・ミラー氏は、「文科省が求める仕様や価格にはもともと対応しており、(マイクロソフトのように)改めて新しい戦略を打ち出す必要はない。むしろこの機会を待っていた。2019年以来、営業部隊は全国からの問い合わせ対応に追われている」と話す。

東京・町田市ではChromebookとG Suite for Educationをすべての小中学校に導入する計画だ。写真は町田市立町田第五小学校での授業の様子(写真:Google)

「1台4.5万円に収めるには、クロームブックを選択せざるをえないという自治体が急速に増えている」。あるPCメーカー関係者はそう明かす。実際、現在出回っているクロームブックのほとんどはこの価格を下回る。そもそもクロームOSはウェブブラウザのクロームがベースで、使用するアプリケーションはすべてクラウド上だ。スペックやメモリ容量は最小限で済み、起動も8秒以内と早い。日本ではエイサー、ASUS、HP、デル、レノボ、NECの6ブランドが展開している。

マイクロソフトの記者会見で前出の中井氏は、起動時間が遅かったり、急にOSの更新が始まるし時間がかかるといった教育現場からの声があることに対し、「これらは誤解だ」と話した。起動が早く、OS更新の概念がないクロームブックを意識したものだろう。ウィンドウズ10で起動時間が約12秒と以前の4分の1になったことや、更新のタイミングのコントロールもしやすくなったことを述べた。

さらに「オフィス365では縦書きやふりがな入力が可能。他社は中国で利用規制されているが、オフィス365は240を超える国と地域で正式に利用が可能」(中井氏)と強調。縦書きやふりがなに対応しておらず、中国で利用できないグーグルのサービスを指したものであることは明白である。

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