「小中学生全員にPC」、1000万台市場で争奪戦 19年度補正で2300億円、巨額予算に沸く企業

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一方でオフィス365とは異なり、グーグルの業務ソフト「G Suite(Gスイート)」の教育版や授業管理ツール「Classroom(クラスルーム)」を組み合わせたグーグルのパッケージ「Google for Education」は無償。校内のクロームブックの端末管理に必要なサービスのみ有料だ。このサービスでは1台あたり4200円の料金を最初に1度支払うのみだ。

当然ながら1人1台にPCが配布されれば、1つの学校で数百台単位を適切に管理する必要に迫られる。「クロームブックは現場での設定の手間がほぼない点が評価されている。児童・生徒に割り当てられたグーグルアカウントでログインするだけで使える。一方で従来のウィンドウズPCは専門業者によるサーバー環境の設定作業などが必要で追加コストがかかっていた」(両方の機種を扱うPCメーカー関係者)

マイクロソフト側もこの点は認識しており、今回発表したパッケージでは、必要な情報を入れたUSBメモリを挿せば自動的に設定が完了する仕組みや、クラウド型の端末管理ツールの提供を本格化させる。「ようやくマイクロソフトから施策が提示され、販売代理店からは安堵の声が聞こえてきている」(前出の関係者)。

グーグルは教育事業を急速に強化

グーグル日本法人が教育事業を強化し始めたのは2~3年ほど前。同社は基本的に組織の詳細を公表していないが、複数のPCメーカー関係者によれば、当初数人だった組織がこの間に50人規模まで拡大したという。現在教育事業の日本代表を務める小出泰久氏は、2018年7月にグーグルに入社する以前に日本マイクロソフトで教育向けデバイス事業を統括していた経歴を持つ。

グーグルが提供する授業管理アプリ「Classroom」の画面(画像:Google)

「初めてクロームブックのことを知った教職員は少なくない。そもそもの使い方の問い合わせが多い」と前出のミラー氏。PCメーカーや販売代理店、技術パートナーの協力を得て情報提供や研修を進めているという。指定のコースを修了した教員が認定資格者やトレーナーとなってほかの教員を教えたり、教育者同士が情報交換するコミュニティーを育成したりと、草の根的な活動にも積極的だ。

各社が教育市場に躍起になるのは、国内の個人向けPC市場が縮小する中、1人1台の環境でPCに触れた世代が将来の重要な顧客になるからだ。アメリカの教育市場でトップシェアを握るHP日本法人の九嶋俊一専務は、「海外では動画制作や写真編集のほか、映画などの作品を楽しむため、『Z世代』(10代~20代前半)のPC回帰が進んでいる。GIGAスクール構想をきっかけに、日本でも若い世代の市場の盛り上がりに期待している」と話す。

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