「小中学生全員にPC」、1000万台市場で争奪戦 19年度補正で2300億円、巨額予算に沸く企業
現在、国内の教育向けPC市場はウィンドウズが約85%。残りをクロームブックとアップルの「iPad」が分け合っている。今後、クロームブックのシェアが2~3割に拡大するとの見方もPC業界では少なくない。ウィンドウズの牙城だった国内PC市場の形勢が大きく変わるかもしれない。
ウィンドウズPCとクロームブックの両方を取り扱うメーカーとしても、商機は大きい。ここで1つの課題になるのが、PCの供給力だ。2019年度の補正予算分だけでも200万台規模となり、早ければ2020年の夏ごろから小中学校への納入が始まる。
大量のPCを一気に供給できるのか
「今まで経験のない数量になる」と話すのは、教育向けPCに長く携わるレノボ・ジャパンの渡辺守・教育ビジネス開発部長だ。「特にインテルのプロセッサーの供給が安定しておらず、われわれも含めて世界規模で調達力のあるメーカーがいちばん有利になる」(同)。傘下のNECや富士通も含めたレノボグループのほか、HPやデルなどグローバルメーカーが供給面のカギを握りそうだ。
もっとも、PCは教育のツールでしかない。「グーグルで検索すればわかるような知識を一生懸命詰めこむのではなく、調べる中で重要な情報を見極める能力が必要。大人が仕事の道具として使うように、子どもも勉強の道具として使えるようにならないといけない。GIGAスクール構想はその第一歩」。ICTを活用した教育手法を研究する東北大学大学院情報科学研究科の堀田龍也教授はそう指摘する。
2019年12月にOECD(経済協力開発機構)が公表した国際学習到達度調査(PISA)では、読解力の順位が加盟31カ国中15位となり、前々回の4位、前回の8位から急落した。要因の1つとして、日本の受験者が2015年に導入されたPCを使ったテスト形式に慣れていないことが指摘されているが、同時に実施されたアンケート調査では、高校1年生の授業におけるデジタル機器の利用率は加盟国で最も低かった。
2020年4月からは新学習指導要領が施行され、小学校でのプログラミング教育も始まる。全教科で共通して必要となる資質・能力として、言語能力と同様に「情報活用能力」が位置づけられた。「端末が入ったからといって、自動的に教育現場が劇的に変わるわけではない。つねに端末を使うことで子どもたちの情報活用能力が高まり、先生の授業の仕方も何年かかけて変わっていくだろう」(堀田教授)。
今後しばらくはPCメーカーの激しい受注合戦が繰り広げられるだろう。問題は、1人1台のPCを宝の持ち腐れにしないための積極的な活用だ。今回同時に整備される無線LANネットワークもテコにして、デバイスとクラウドが一体となることで、新しい教育の形が生まれる可能性を秘めている。
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