ソニー不動産、社名から消えた「不動産」の行方

上場前に社名を「SRE」に変更、その意味は?

不動産価格を決めるのは、不動産に対する需給バランスだ。そのためAIによる需給バランス分析を磨いていたところ、不動産業はもちろん、異業種からも「システムを使えないか」という打診が来るようになった。現在はビル内の電力需要予測や、工場での在庫管理といった、不動産業の枠を超えた業種への外販を進める。「自社でAI開発部隊を持つ企業からの発注もある」(西山氏)と胸を張る。

売上高では依然として不動産が中心だが、AI事業は利益率の高いことが特徴だ。「東証の区分では(売上高が基準となるため)不動産業に区分されているが、機関投資家の多くはわれわれをIT企業として捉えている。営業利益ベースでは不動産、IT、AIが3:3:4の割合になる」(西山氏)。

2018年10月にはAI開発の子会社を設立。不動産業という色は薄れ、アナリストからは不動産業界よりもむしろ、AIアルゴリズム機能を開発するPKSHA Technology(パークシャテクノロジー)と比較されることが多いという。昨年6月に社名を「ソニー不動産」から「SREホールディングス」に変更した背景には、祖業である売買仲介からAIシステムの外販へと軸足を移しつつある事情がある。

それでも不動産はやり続ける

投資家の中からは、「手間がかかり利益率も低い不動産業をやめて、IT業に純化すべき」という声も上がる。だが、「自社で不動産業も展開する中で、現場にどんな課題があるか、それを技術でどう解決できるかがわかる」(西山氏)という理由から、不動産業をやめる考えはない。

むしろAIの技術者が不動産営業マンと机を並べて仕事をし、時には不動産の営業にも同行して現場の課題を吸い上げる。専門性が高い不動産業はGAFAといった巨大IT企業が参入しづらく、資本力や人員で圧倒する大手企業に侵食されるおそれも少ないため、小回りのきくIT企業にとって不動産業はブルーオーシャンだという。

SRE(当時はソニー不動産)が開発した「AIFLAT Dokanyama」(記者撮影)

現在では売買仲介のほか、IoT機器を搭載した賃貸マンション「AIFLAT(アイフラット)」の開発といったデベロッパー事業にも進出する。

昨年2月に西日暮里駅前で全14戸の「AIFLAT Dokanyama」を建設、不動産会社に5億3000万円で一棟丸ごと売却した。現在も中目黒や板橋などで複数のマンション開発を計画しているほか、不動産投資を行う合同会社にも出資している。将来的にはREITを組成し、SREのみならずソニーグループ全体の不動産の受け皿にすることも視野に入れているという。

初値(2475円)は公開価格(2650円)を7%下回ったが、それでも直近のPER(株価収益率)は70倍超と不動産業の平均値(10倍台)からすれば異次元の水準だ。IT企業を自称しつつも、実際は不動産業が収益の大半を占める企業が多い中、自前のIT力で稼ぐ正真正銘の「不動産テック」のあり方を示せるか、投資家は視線を送っている。

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