ソニー不動産、社名から消えた「不動産」の行方 上場前に社名を「SRE」に変更、その意味は?
「ソニーが不動産業に進出」。そんなニュースが耳目を集めてからはや5年、とうとう株式上場にまでこぎつけた。
2019年12月19日、SREホールディングスが東証マザーズ市場に上場した。SREの前身は、ソニーの新規事業第1弾として2014年に設立された「ソニー不動産」だ。
「両手」禁止
祖業は不動産の売買仲介。「不動産業を脅かす存在だと思われていた」。西山和良社長は設立当初に業界から向けられた視線を振り返る。ソニーで新規事業の立ち上げを任された西山氏。不動産投資家という顔を持つ同氏は、ソニーのテクノロジーを用いて不動産業に新しいルールを持ち込むことを考え、行きついたのが不動産の「両手(りょうて)仲介」の打破だった。
「両手仲介」とは、不動産会社が売り手と買い手それぞれの代理人となり、双方から仲介手数料を徴収すること。高く売りたい売り手と、安く買いたい買い手双方の代理人を務めることは、本来、利益相反にあたる。
そこで同社は創業から現在まで、物件の売り手と買い手の仲介それぞれに代理人を設けて「片手仲介」に徹する。万が一、社内で売り手と買い手をマッチングし「両手」になりそうな場合は、「利益相反になりうることを顧客に伝え、覚書を交わす」(西山氏)ほどの徹底ぶりだ。
2015年にはヤフー(現・Zホールディングス)と共同で、仲介会社を通さずに個人間での不動産売買を支援するサイト「おうちダイレクト」を開設。不動産価格の推定や集客にはソニーが有するAI技術を生かす。最終的には人の目でもチェックし、AIによる価格が近隣相場などと乖離する場合は改めて精査するが、同業他社の査定と比べて精度は高いと自負している。
仲介業から出発したSREだったが、2017年頃からビジネスの様相が変化する。「担保評価のため、貴社の価格推定エンジンを使いたい」。金融機関からシステム利用の打診が舞い込んだ。こうして自社に蓄積された取引データをAI解析したシステムの外販が、AIサービスとしてポートフォリオに加わることになる。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら