日本電産、「元日産の新社長」にのしかかる重圧 就任2年弱で吉本・現社長を更迭したわけ

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2月4日の会見で、永守氏は「吉本を3~4年かけてじっくり熟していけばよかったが、僕が悪かった」と自身の責任に言及したうえで、「彼には能力があるし、まだ若いから4~5年頑張って再挑戦してほしい。いずれは『関会長』『吉本社長』になればいい」と吉本氏への気遣いを忘れなかった。

その関氏にかかる永守氏からの期待と重圧は相当なものだろう。後継者探しに苦悩している永守氏に「今回こそは立派な人材が見つかって、気持ちが安らかになった」と言わしめたが、呉氏や吉本氏と同じ道をたどらない保証はない。

自動車部門強化狙い、関氏を招聘

関氏は1984年に防衛大学校を卒業後、日産に入社。生産技術畑を中心にキャリアを重ね、中国事業のトップを務めるなどマネジメントと生産現場の双方に精通した幹部として日産内の人望も厚かった。「関に目をつけていたが、いずれ日産の社長になるだろうから諦めていた」(永守氏)。

永守会長は「オオカミ2人で引っ張って、伸ばしていく」と語った(写真:ヒラオカスタジオ)

自動車事業に精通した関氏に目をつけた理由もある。日本電産は2000年代から自動車向け事業を展開し、2019年3月期の売上高のうち、車載向けが約2割を占めている。「2030年に売上高10兆円になったときは、4兆円が自動車向けになる」(永守氏)。電気自動車(EV)の普及が本格化し、中国を中心にEV向けの駆動モーターの開発・生産に注力。2025年までの受注量は1000万台を超えており、生産能力拡大のために中国やヨーロッパなどで計画中の工場に総額2000億円規模を投じる。

そこに、日産の西川廣人前社長の後任に内田誠氏が就任するという情報が入った。「どうなるかわからないものだ。こんな機会はないと猛攻撃をかけた」(永守氏)。関氏としても日産で社長になる道が事実上断たれた中で、永守氏のオファーは魅力的だったようだ。関氏は12月下旬に移籍を決断。「『だまされたつもりで来い』と言われ、だまされたつもりで来た。売上高10兆円をともに目指す」と語った。

日本電産に移籍してからわずか1カ月弱での社長就任の発表に、「日本電産をまだ理解できていないのではないか」と懸念する声もある。しかし、関氏は「(日本電産に)入社して、工場など生産現場をみてきたが、自動車の生産ラインにも通じるところがあり、慣れることはできた」と話し、ものづくりのプロとして自信をみせた。

「(永守氏と関氏の)オオカミ2人で(日本電産の業績を)引っ張って、伸ばしていく」(永守氏)。4月から正式に発足する新体制で集団指導体制から訣別し、永守氏と関氏が日本電産の経営を主導する。2人の強力なリーダーシップで日本電産は10兆円企業へ飛躍できるのか。それはひとえに関氏が永守氏の期待に応えられるかにかかっている。

劉 彦甫 東洋経済 記者

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りゅう いぇんふ / Yenfu LIU

東洋経済編集部員・記者。台湾・中台関係を中心に国際政治やマクロ経済が専門。現在は、特集や連載の企画・編集も担当。1994年台湾台北市生まれ、客家系。長崎県立佐世保南高校、早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了、修士(ジャーナリズム)。日本の台湾認識・言説を研究している。日本台湾教育支援研究者ネットワーク(SNET台湾)特別研究員。早稲田大学台湾研究所招聘研究員。ピアノや旅行、映画・アニメが好き。

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