東京高検検事長の「定年延長」、その本当の狙い

露骨な介入で脅かされる検察の政治的中立性

東京高検検事長の定年延長が永田町や霞が関に波紋を投げかけている(写真:西村尚己/アフロ)

政府が黒川弘務・東京高検検事長(63)の定年を半年間延長すると決めたことが、永田町や霞が関に臆測を広げている。

黒川氏は、並み居る検察首脳の中でも「安倍晋三首相や菅義偉官房長官の覚えがめでたい人物」(司法関係者)とされ、「前例のない定年延長は、検事総長人事も絡めた官邸の介入」(閣僚経験者)と受け止められている。

誕生日の8日前に決まった定年延長

黒川氏の定年延長は1月31日の閣議で決まった。65歳が定年の検事総長を除き、一般の検察官の定年は63歳。このため2月8日に63歳となる黒川氏は、検事総長に昇格しない限り、誕生日に定年退官する予定だった。しかし、政府はその直前に「業務遂行上の必要性」(森雅子法相)を理由に過去に例のない定年延長に踏み切った。

政府側は「保釈中に逃亡した日産自動車前会長のカルロス・ゴーン被告の事件捜査継続を考慮して法務省が決めた措置」(官邸筋)と説明する。しかし、同事件の捜査は東京地検の担当で、「捜査実務では東京高検は関係がない」(司法関係者)。黒川氏の定年延長が決まったのは誕生日のわずか8日前。2019年度の補正予算が成立した直後だったが、政界では「次期検事総長に子飼いの黒川氏を充てて、検察全体ににらみを利かせるのが官邸の狙い」(立憲民主党幹部)との見方が広がっている。

黒川氏は有能な法務官僚として、政界と司法のパイプ役となる法務省官房長を約5年も務め、同省トップの事務次官を経て2019年1月に検察ナンバー2の東京高検検事長に就任した、文字どおりの検察エリートだ。

ただ、黒川氏には検事任官同期(1983年)の林真琴名古屋高検検事長(62)という「強力なライバル」(法務省幹部)が存在する。事務次官就任時にも「法務省側が推した林次官案を官邸が覆して黒川氏にした」(同)との噂も出た。

黒川氏は、検察首脳として安倍首相の意向を踏まえて共謀罪などの実現に奔走し、森友学園問題における財務省の公文書改ざん事件でも、佐川宣寿元国税庁長官ら関係者全員の不起訴処分を主導したとされる。このため、政界では「安倍政権のスキャンダルをもみ消す官邸の番人」などと呼ばれてきた。

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