中国は、これまで悪いと言われてもGDPの名目成長率6%程度を維持。13億人の消費意欲を高めてきた。アメリカ人ほどの強欲な消費はないにしても、観光や高級ブランド品などへの影響は大きい。2020年1~3月期はかなり大きく落ち込む可能性が高い。個人消費の低迷は経済に大きな影響を与える。
実際、アメリカでは春節による中国人観光客が減少したことで100億ドル(約1兆800億円)の損失が出ると発表されたが、世界中で同じような現象が起きているはずだ。かつて、アメリカが風邪をひくと日本が肺炎になる、と言われたが、現在では中国が肺炎にかかれば、世界中も肺炎に感染すると考えたほうがいいのかもしれない。
最近のアメリカの株式市場は、ニューヨークダウをはじめS&P500、ナスダックともに史上最高値の更新を続けている。これをバブルと見るかどうかは別として、投資家の間には「高所恐怖症」が芽生え始めている。こういうときに、これまで経験したことのない未知のリスクに遭遇すると、投資家の多くは資金を引き揚げる行動に出てくる。
そして今、株式市場で最も恐れられているのが、いまや個別銘柄の取引以上に普及した「ETF(上場投資信託)」の暴走だ。現在の株式市場は、日々の売買取引ランキング上位にETFが入るなど、株式市場に上場されたインデックス投信(=ETF)が活発に取引されている。日本では、ETFに中央銀行の莫大な資金が流れ込んでおり、日本の株価を支えている原動力にもなっている。
高速売買はパンデミックになったらどう動く?
このETF売買の主体となっているのが、外国人投資家やヘッジファンドなどの機関投資家であり、ETFの組成にも関わる高速売買業者だ。AIによる高速売買が当たり前の世界になっている現在、金融市場はAI同士の戦いと言っても過言ではない。言い換えれば、株価や金利、為替、原油価格といった指数に連動するように設定されたETFが、市場の大暴落時にどんな動きになるのか――。
急激な相場変動によってAIが一斉にETFを売りに回ったときに、指数の構成銘柄はどうなるのか……。現在の株式市場にはその経験が乏しい。通常は売り戦略が攻勢に出れば、買い戦略に転ずるAIも当然現れてくるのだが、パンデミックのような事態では、それがどの方向に進むのか不透明なところがある。
例えば、AIによる一方的な売り戦略で買い手が不在となり、価格がつかなくなったときどうなるのか。アメリカのような値幅制限のないマーケットでは、1929年の世界大恐慌の引き金となった株価暴落のような事態にならないとも限らない。マーケット全体を規制するサーキットブレーカーのようなシステムもあるが、本当に役立つのか不透明だ。流動性が枯渇すれば、株式相場はパニックになりかねない。
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