パンデミックを想定したプログラムが組み込まれているAIがどのぐらいあるのか――。不透明な部分だが、アメリカの有力投資ファンド「カーライルグループ」の創業者が、現在の金融市場にとってブラックスワンとは何か、という質問に「地政学(軍事衝突)リスク」「政府債務問題」そして「世界的なパンデミック」と答えている。パンデミックは、ある程度想定の範囲内なのかもしれない。
世界的な感染爆発が金融市場のブラックスワンの1つにならないことを祈るばかりだ。
今回の感染拡大による景気やマーケットへの影響は、株式市場の暴落だけにとどまらない。感染症の専門家の多くは、今回の新型肺炎のピークは4~5月になるだろうと予測している。その後は収束すると見込まれる。
とはいえ、それまでに株価が想定以上に下がった場合、金融市場の資金の流れが変化するかもしれない。現在の金融市場は、アメリカを除く世界のほとんどの国が金融緩和を長期にわたって実施し、金融市場はマネーが溢れる「過剰流動性」に陥っている。
簡単に言えば、世界中の金融市場がバブルに陥っており、バブル崩壊が懸念されている。とりわけ心配されているのは株式市場だが、実はひとつだけ望みの綱が残っている。アメリカの中央銀行である「FRB(連邦準備制度理事会)」が、まだ金融緩和の余地を残していることだ。アメリカの金融緩和が引き金になって、パンデミック時の株価暴落を防ぐことができる可能性がある。日本や欧州の多くは、さらなる金融緩和の余地をあまり持っていない。
心配なのは債券市場
もっとも、株式市場はFRBの金融緩和で何とかなるかもしれないが、心配になるのは日本やアメリカ、中国など世界中で発行されてきた、莫大な国債や社債など債券市場だ。リーマンショック以降、債券市場は「史上最低の低金利=史上最高値の債券価格」で長年売買されてきた。
日本のように前人未到の領域で国債を発行し、いまや国債価格は史上最高値(金利は最低限の低さ)のバブルに陥っている。こうした政府債務のマーケットが、これまでギリギリのバランスを保ちながら価格を維持してきたのだが、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大が、このバランスを崩してしまうかもしれない。
バブル崩壊で一斉に売られる事態に陥れば、金利が高騰して景気の足を引っ張ることになる。債券市場のバブル崩壊は、日本とアメリカで最大級の大惨事を招くかもしれない。
同様に、リーマンショックの原因ともなった「CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)」や「RMBS(住宅ローン担保証券)」といった「クレジット(信用)デリバティブ(金融派生商品)」といった金融セクターも大きな打撃を受ける可能性がある。
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