武漢市の周先旺市長は1月27日、CCTVのインタビューで辞職する意向を示した。同時に「感染症に関する情報は法律上の手続きを経ないと公表できなかった」と述べたが、この言葉が、対策の遅れには中央政府の責任もあるという不満をこめたものだと受け止められたのだ。火の粉を党中央、すなわち習氏に飛ばすわけにはいかないので上司である馬氏が詰め腹を切らされたのだろう。
武漢市の隣に位置する黄岡市も同様に封鎖されているが、同市では予防対策に手抜かりがあったとして党幹部337人が処分を受けた。封鎖されている中で代わりの幹部がいるのだろうかと不安になるが、「現地の幹部に責任をとらせる」という中央の意思の表れとみられる。
習氏との関係がすべてに優先する
武漢では、党書記がビジネス界出身の馬氏でなく、前任の陳一新氏であったら結果は違ったのではないかとの声があがっている。現在は司法・公安関係を統括する中央政法委員会の秘書長(事務局長)である陳氏は、習氏が浙江省書記であったときに政策ブレーンとして仕えた。
今も習側近の1人として知られ、彼の人脈があれば、中央との情報共有や政策の調整がずっとスムーズだったろうというのだ。これには、習氏とのつながりがすべてに優先する現在の中国の状況を映し出している。
2012年に共産党総書記になってから、習氏はあらゆる重要政策を自分が所管するようになった。重要政策を仕切るためのタスクフォース(領導小組)の組長は、前任の胡錦濤時代は複数の最高幹部に分散していたが、習氏は自ら主要なポストを独占した。
これが改革のスピードを上げると期待されたが、反面で習氏の判断を待たないと何も動かないシステムが出来上がってしまった。習氏との個人的パイプがある場合はスムーズに動くが、そうでないと何も動かない。武漢市で新型肺炎対策が遅れたのは、後者のケースだったとみられる。
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