2500年前の「論語」だからこそ学べる人間の本質 いつの世になっても変わらない身と心の正し方

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顔淵(がんえん)、邦を為(おさ)めんことを問う。子曰く、夏(か)の時を行い、殷(いん)の輅(ろ)に乗り、周(しゅう)の冕(かんむり)を服す。楽(がく)は則ち韶舞(しょうぶ)。鄭声(ていせい)を放ち、佞人(ねいじん)を遠ざく。鄭声は淫(いん)にして、佞人は殆(あや)うし。

顔淵がセンセイに、国を治めるために必要なポイントはなんですか、と訊ねた。

「いいでしょう。順番に言いいますから、メモしてください。まず、その1は、夏の時代の暦を使うことです。わたしたちの国は農業国ですから夏の時代に使われていた農業暦を採用するのが合理的ですね。

ポイントの2は、王様が乗る車は殷の時代に使われていた輅がいいでしょう。質素で丈夫で見栄えも悪くありません。ポイントの3は、儀式用の冠はファッショナブルで材質も悪くなく、おまけに経済的なものにすること。周の時代のものがいいと思います。

最後に国歌について言っておきます。これも大切です。威厳があって浮ついていなくてしかも音楽性の高いものにすること。お手本は、舜の時代の韶という舞曲です。ほんとうにすばらしいと思いますよ。いま一世を風靡(ふうび)しているポップ……そう、鄭のヒット曲ですね、ああいう、低劣な本能に訴えるだけの音楽を採用するのだけはやめてください。あと、口だけ人間は用いぬこと。これは言うまでもないことですが」

子曰く、人、遠き慮(おもんぱか)りなければ、必ず近き憂えあり。

「いまがよければと目先のことばかり考える。そうなると、必ずしっぺ返しに遭います。断言してもいいですよ。このことは、政治にとって最も大切なことといってもかまいません。いま金がないから緊縮する、その結果、将来の世代がひどい目に遭う。いま、働く世代がたくさんいるからその金を使ってじゃんじゃん軍備を増強する、でも半世紀後、高齢化社会を迎えたら、働く世代がいなくなって年金制度が崩壊する。

いくらでも例をあげることができるでしょう。でも、政治家も有権者も役人も、みんな『目の前』のことさえよければ、自分だけなんとかなれば、と思って行動してしまうのです。残念ですがね」

(すいません、センセイ……)

誹謗するのは好まないが、なあなあも反対

子曰く、已(や)んぬるかな。吾れは未だ徳を好むこと、色を好むが如き者を見ず。

「正直にいいますが、センセイは、ガッカリしています。あなたたちに。気持ちはわかりますよ。みんな、若い男の子ばかりなんですから。女の子のことが頭に浮かんで勉強も手につかないのも。でもね、これだけ雁首(がんくび)をそろえていて『女の子より学問のほうが好き!』という人間が1人もいないなんて……『またかよ! うるせえなあ』と思っている弟子もいるかもしれません。悪いけど、何度でもいいますからね!」

子曰く、臧文仲(ぞうぶんちゅう)は其れ位を窃(ぬす)む者か。柳下恵(りゅうかけい)の賢なるを知りて、与に立たざるなり。

「魯(ろ)の国の高官・臧文仲のような人間を『月給泥棒』と呼ぶのです。わたしは、あまり人を誹謗(ひぼう)するのは好みませんが、なあなあにしておくのも反対です。なにしろ、臧文仲は、名裁判官で知られた柳下恵がほんとうに優れた人材であるのを知っていたのに、言うことを聞かないのでクビにしてしまったのです。政治家としても上司としても最低のクソ野郎というしかありませんね」

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