2500年前の「論語」だからこそ学べる人間の本質

いつの世になっても変わらない身と心の正し方

孔子の教えを現代の言葉で解釈すると……(写真:cooltree/PIXTA) 
2500年前に書かれたとされる『論語』は、数多くの政治家、経営者、学者、思想家……長きにわたって各界のリーダーたちに影響を与えてきた。その魅力とは、何か?
高橋源一郎氏による『論語』の完全版現代語訳『一億三千万人のための『論語』教室』から序文の一部を紹介した「論語を古いと思う人は本質が全然わかってない」(2020年2月7日配信)に続き、普遍的な人間の本質、身と心の正し方への言及が多い「衛霊公」(えいれいこう)の前半部分を公開する。

「君子」だって悲惨な目にも遭う

衛(えい)の霊公(れいこう)、陳(ちん)を孔子に問う。孔子対(こた)えて曰く、俎豆(そとう)の事は則(すなわ)ち嘗(かつ)てこれを聞けり。軍旅の事は未だ学ばざるなり、と。明日(めいじつ)遂に行(さ)る。陳にありて糧(りょう)を絶つ。従者病み、能(よ)く興(た)つことなし。子路(しろ)慍(いか)り見(まみ)えて曰く、君子も亦(ま)た窮するあるか。子曰く、君子固(もと)より窮す。小人(しょうじん)は窮すれば斯(ここ)に濫(みだ)す。

衛の霊公がセンセイにこんな質問をしたことがある。

(編集部註:高橋氏は、孔子のことを、親しみをこめて「センセイ」と呼んでいる)

「失礼ですが、センセイは、軍事についてはお詳しいですか?」

すると、センセイはこうお答えになった。

「わたしは、祭祀(さいし)やさまざまな文化については学んでまいりましたが、軍事や戦争については学んでおりません」

そして、そういった後、翌日には衛の国を立ち去ってしまった。おそらく、センセイは、衛の王様の言動に帝国主義的侵略欲を感じ、そんなことに協力させられてはたまらない、と思ったのかも。

さて、衛の国を出たセンセイ一行は、今度は招待されていた楚(そ)の国を目指した。それを聞きつけた陳の国では、センセイの力で楚がこれ以上強くなったらヤバいとばかりに、軍隊を派遣してセンセイ一行を包囲した。たちまちセンセイたちは、食事にも事欠くようになったのである。門人たちの中には病気になって立ち上がることもできない者まででた。イラついた子路は、つい、センセイに当たり散らしてしまった。

「なにが『君子』ですか。このざまじゃしようがないですよ!」

「『君子』だって人の子です、悲惨な目にだって遭いますよ。そういうとき、ジタバタと取り乱すのが『小人』ね。子路、慌てない、慌てない」

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