暗記だけで数学を乗り切った学生の悲しい末路

暗記数学こそ読解力低下の遠因ではないか

「ものの個数を求める問題」には、就活の適性検査によく出題される2通りに数える問題もある。これは、たとえばアルバイト表のようなもので、横には日、月、…、土と曜日が並び、縦にはAさん、Bさん、Cさん…と名前が並び、各人が出勤するところに〇を入れる場合、横に並んだ〇の合計と縦に並んだ〇の合計は同じ個数になる。その性質を使うような問題である。

さて、数学には筆者も講義している「離散数学」という分野がある。これは、③で紹介したような「対称性を利用して数える」こと、京大入試問題で紹介したような「帰納的に数える」こと、上のアルバイト勤務表で紹介したような「2通りに数える」ことなどが基礎となる分野であり、高校の学習指導要領にも含めることが検討されたことがある。この分野は昨年、経済産業省が来るAI時代を視野に入れて発表したレポートの中で、「代数学」と「情報科学」にまたがる分野として図示されている。

1つの問題に1つの選択しかできない人

かつて、代数学と並んで離散数学を研究したこともあって、暗記数学の負の側面にある「ものの個数を数えること」の面白さと、将来重要になる側面も考慮して、昨年末に高校生でも読むことが可能な『離散数学入門 整数の誕生から「無限」まで』(講談社ブルーバックス)を出版した(上記の京大入試問題の解説も掲載)。暗記数学の対極にある世界だと考える。

最後に、数学教員を目指す桜美林大学2年生の学生が新年早々に述べた次の一文は、私にとって生涯忘れられないものとなるだろう。

「暗記数学は、1つの問題に対して1つの選択しかできない人を育てていると思います」

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