暗記だけで数学を乗り切った学生の悲しい末路 暗記数学こそ読解力低下の遠因ではないか
まず、④の作図文の学びは、論述文や証明文を書く学びの基礎として根本的に重要である。シェアの大きい2社の教科書に関して、1970年と2002年の中学数学教科書における全文記述の証明問題数を、ゼミナールの学生と一緒に教科書研究センターで調べたことがある。どちらも約3分の1になったように、「ゆとり教育」元年には極端に減った事項である。現在では若干見直されてきたが、1970年の教科書とはまだ開きがあり、④はその影響として捉えたい。
2019年末に発表されたPISA調査(OECD生徒の学習到達度調査)において、「日本の15歳の生徒は読解力が大幅に低下した」ことを問題としてマスコミは大きく取り上げた。
実は、大きく足を引っ張ったのは(科学的文献に対する)「自由記述問題」である。これには国立教育政策研究所も分析しているが、根拠を示して説明できるかどうかを問う問題である。過去のPISA調査でも、日本の生徒は「自由記述問題」で白紙が多いなどの指摘が再三あった。
関連する事例として、2004年2月に行われた千葉県立高校入試の“国語”で、地図を見ながらおじいちゃんに道案内することを想定した文を書く問題が出題されたが、結果はなんと半数が0点だったのである。地図の説明は作図文の学びの応用であり、中学数学における図形の作図文や証明文の学びを大切にすれば、自ずとその力は向上するだろう。そして、PISA調査の「自由記述問題」の成績も上向くと考える。
マークシート問題が得意なだけ
次に③と⑤について論じたい。まず、日本の生徒がPISA調査でいい成績を収めているのは、いわゆる「多肢選択問題」である。一言で述べると、これはマークシート式問題と同じで、知識の量がものを言う問題である。
一方、素朴に試行錯誤を重ねて解く「ものの個数を求める問題」は算数の知識で解くことができるものの、高校入試や大学入試に出題されると一般に成績は悪い。
特徴的な問題として、次の2007年度京都大学入学試験問題を紹介しよう。
この問題は難しい問題ではあるが、一歩ずつ試行錯誤を重ねていくことを考えてみよう。1段目まで昇るには明らかに1通りであり、2段目まで昇るには[1段→1段]と[2段]の2通りである。3段目まで昇るには、[1段→1段→1段]、[2段→1段]、[1段→2段]の3通りである。
そのように試行錯誤を重ねて少しずつ数えていくと、一般的な「規則性」がわかる。それによって正解を得るのである。
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